特許の外国語の引用文献が難解?応日本語文献を見つけよう!

特許の外国語の引用文献が難解?対応日本語文献を見つけよう!

ArticleNo. 0721-2

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 今回は、拒絶理由通知等で外国語の引用文献が引用された場合の対処法について、説明します。

この記事を参照して得られる効果

 

①.外国語文献が引用された場合の対処法を理解できます。
②.Espacenetの使い方が分かります。

 

最初に

 今回、外国語の引用文献が引用された場合の対処法を説明するにあたり、旭硝子株式会社の出願(特願2013-1778号)に対する拒絶理由通知を使用させてもらいました。本出願を担当した特許事務所は、新都心国際特許事務所ですね。

 出願を使用するにあたり、管理人と、上記の会社及び特許事務所とは、何らの利害関係等は無いことを申し述べておきます。

特願2013-1778号に対する拒絶理由通知の内容

 上記の出願に対して、新規性・進歩性の拒絶理由が通知されました。

 この拒絶理由通知中では、引用文献1~5が引用されました。拒絶理由通知の一部を下記に示しています。

             <引用文献等一覧>
(引用文献)1.特開2000-103651号公報
(引用文献)2.米国特許出願公開第2012/0021149号明細書
(引用文献)3.特開2010-132497号公報
(引用文献)4.米国特許出願公開第2012/0094112号明細書
(引用文献)5.特表2007-519817号公報

 上記の拒絶理由通知では、「引用文献等一覧」の引用文献2及び4において、「米国特許出願公開」が引用されています。

 一般的に、拒絶理由通知では、この他にも中国語の文献等が引用されることもあり、「英語は、がんばれば読めても中国語は…」なんて場面に出会うこともしばしばかと思います。英語の文献の読み込みも面倒ですよね。

 上記のように外国語文献が引用されてきた場合には、対応する日本語文献が無いか検索をかけましょう。

 米国や中国の出願と同一内容の出願が日本でなされていることは、多々あり、対応日本語文献が存在すれば、解読の時間短縮になりますからね。

対応日本語文献の存在の有無をEspacenetで調べよう!

 ある外国語文献に対応日本語文献が存在するかは、その外国語文献(外国語出願)のFamily(ファミリー)を調べます。

 外国語文献のファミリーとは、その外国語文献及びその関連出願の束を意味しています。具体的には、下記の図1に示すような出願間の関係を見てもらえれば理解できるかと思います。下記の図1のファミリーの例では、US出願を基礎出願としたPCT出願が行われ、そのPCT出願からUS、EP、JP、及びCNへの移行出願が行われています。さらに、USへの移行出願、及びJPへの移行出願では、移行後に分割出願が行われたことが分かります。

 この例から分かるように、ファミリーに含まれる出願の間には、優先権や分割出願等の関係があります。

【図1】

0721-2_Fig1_FamilyExample2

 外国語文献のファミリーを調べるには、種々の方法がありますが、Espacenetが一番使い易いと思いますので、これを紹介します。

Espacenetとは?

 Espacenetの説明については、ウィキペディアにもありますが、欧州特許庁及び欧州特許条約加盟国の特許庁が提供する、特許及び特許出願の検索のための無料のオンライン・サービスです。

 百聞は一見にしかず、ということで、「米国特許出願公開第2012/0021149号明細書」を外国語文献の例とし、実際に検索をかけて、対応日本語文献があるかを確認してみましょう。

(1)EspacenetのHPに飛ぶ

 EspacenetのHPに飛ぶと、下記の図2に示すようなページが出るかと思います。

 図2の「SmartSearch:」の空欄に、「米国特許出願公開第2012/0021149号明細書」の番号部分を半角(20120021149)にして打ち込み、検索をかけてみましょう(図3)。

 このとき、典型的には、「/」等は入れないようにしましょう。エラーを生じることがあるためです。

【図2】

0721-2_Fig2_Espace1

【図3】

0721-2_Fig3_Espace2

(2)複数の候補の中からUSに関する公開文献をピックアップする

 上記の検索結果では複数の候補が示されました(下記の図4)。次に、「米国特許出願公開第2012/0021149号明細書」の「US」及び「20120021149」の続き番号を含むものを探し出します(下記の図5)。

 ブラウザーによるかと思いますが、典型的には「Ctrlキー + Fキー」で検索窓(図5の上部の赤丸)が開きますので、そこに「US」等を記入し、検索をかけるとよいかと思います。

 すると、「米国特許出願公開第2012/0021149号明細書」に対応する「US2012021149 (A1)」が見つかりました(図5の下部の赤丸)。

 この文献をクリックして次のページに遷移しましょう。

【図4】

0721-2_Fig4_Espace3

【図5】

0721-2_Fig5_Espace4

(3)ファミリーの確認

 クリック後のページ遷移により、下記の図6に示す画面が表示されました。ここに表示されているものは、「米国特許出願公開第2012/0021149号明細書」の書誌的事項です。そもそもの検索の目的は、当該US明細書のファミリーに対応日本語文献が存在するかを確認する、でした。

 したがいまして。図6中の「INPADOC Patent Family」(赤丸)をクリックしましょう。この項目をクリックすることにより、ファミリーを確認することができます

 下記の図7に示すような画面が表示されましたでしょうか?

【図6】

0721-2_Fig6_Espace5

【図7】

0721-2_Fig7_Espace6

(4)対応日本語文献を見つけ出す

 上記の図7中に、「米国特許出願公開第2012/0021149号明細書」の対応日本語文献が存在するか確認します。具体的には、上記したブラウザーの検索機能(「Ctrlキー + Fキー」で検索窓が開く)を使用し、検索窓中に、「JP」を記入して検索をかけましょう(下記の図8)。

 すると、図8の赤丸部分に示すように、JP出願が1つだけ見つかりました。

【図8】

 0721-2_Fig8_Espace7

(5)見つけ出した対応日本語文献と外国語文献との関係を確認する

 次に、「米国特許出願公開第2012/0021149号明細書」と、このJP出願(JP2013-517206号公報)との関係を調べます。

 これらの間の関係を調べる理由は、US(外国語文献)とJPの出願(対応日本語文献)の間で、明細書の内容に差異がある可能性を見出すためです。

 JP出願の書誌的事項を確認するため、上記の図8の赤丸部分をクリックし、遷移画面で文献をダウンロード(「原文献」をクリック)します(下記の図9)。

【図9】

0721-2_Fig9_Espace8

 当該JP出願の書誌的事項によれば、このJP出願は、WO2011/088330号パンフレットからの移行出願のようです(下記の図10の赤丸を参照)。

 この書誌的事項に基づいて、上記の図8の画面で、WO2011/088330を探したところ、存在していました。

 また、WO2011/088330は、米国仮出願(Provisional application)の61/195694に基づくPCT出願であり(下記の図11の赤丸参照)、米国特許出願公開第2012/0021149号明細書も、この61/195694に基づく出願でした(下記の図12の赤丸参照)。

 まとめると、これらの出願(文献)の間には、下記の図13のような関係があることが分かります。

※米国仮出願(Provisional application)
 米国の仮出願とは、通常の特許出願に先立って出願日を確保することを目的とした簡易な特許出願のことです。
 例えば、研究論文の発表期日が差し迫っているにも関わらず、特許出願用の明細書の準備が間に合わないような場合に、当該研究論文を提出することによって出願日を確保し、かつ新規性の喪失を回避すること等を目的として、これを利用します。

【図10】

0721-2_Fig10_Espace9

【図11】

0721-2_Fig11_Espace10

【図12】

0721-2_Fig12_Espace11

【図13】

0721-2_Fig13_Espace12

 引き続き、「米国特許出願公開第2012/0021149号明細書」と、このJP出願(JP2013-517206号公報)との関係を調べます…が、その前にちょっと説明をさせて下さい。

 一般的に、PCT出願から各国への移行を行う際には、各国の言語に翻訳した出願を行う必要があります。

 PCT出願に基づく翻訳は、典型的には逐語訳(Mirror Translation)と呼ばれ、PCT出願と移行出願との間には、誤訳の無い限り、差異(記載内容で異なる点)の無い対応関係が存在します。

 してみると、WO2011/088330と、米国特許出願公開第2012/0021149号明細書との間に差異が無ければ、米国特許出願公開第2012/0021149号明細書と、JP2013-517206号公報との間に差異が無いと考えることができます。

 このような場合には、JP2013-517206号公報に基づいて、米国特許出願公開第2012/0021149号明細書の中身を判断して問題ないでしょう。

まとめ

 さて、まとめです。

 拒絶理由通知等で引用された外国語文献の解読は、典型的には難しいものです。

 したがって、ここまで述べてきたように、対応日本語文献を見つけ、それに基づいて外国語文献の内容を判断するというテクニックを伝えました。

 しかしながら、当該外国語文献の対応日本語文献と言えるためには、これらが逐語訳の関係にあることが望ましい(例えば、PCT出願における移行国がUSJPなどの関係)ことがご理解いただけたかと思います。仮に、外国語文献が、優先権主張した出願であったり、分割等を何回も行った出願であった場合には、対応日本語文献との比較における差異が大きくなる(各文献の間に相違点が多々存在する)可能性があることもご理解いただけたと思います。

 したがって、対応日本語文献を探し出せたとしても、外国語文献との一致の程度について評価することを必ず行っていただければと思います。

 今回は、ここまでです。

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