拒絶理由通知及び拒絶査定の回数、応答期間、放置結果、並びにこれらの差異について

拒絶理由通知及び拒絶査定の回数、応答期間、放置結果、並びにこれらの差異について

ArticleNo. 0610-4

 本サイトは、これを見た方に特許出願書類の作成等を実務レベルかつ独力で行えることを目的としています。

 本サイトの管理人は弁理士として仕事をしており、システムエンジニア・中小特許事務所・大手特許事務所・大企業知財部を経験し、みなさまのお役に立てれば光栄です。

 今回は、拒絶理由通知及び拒絶査定の回数、期間、放置、及びこれらの差異について説明します。

この記事を参照して得られる効果

 

①.拒絶理由通知と拒絶査定の違いが分かります。
②.拒絶理由通知と拒絶査定の回数が分かります。
③.拒絶理由通知と拒絶査定の応答期間が分かります。
④.拒絶理由通知と拒絶査定の放置結果が分かります。

 

拒絶理由通知と拒絶査定の違い

 拒絶理由通知と拒絶査定の違いの理解のために、出願、審査、特許権設定のフローを簡単に説明します。

(1)出願・審査・特許査定のフロー

 特許権の取得までには、特許出願・審査・特許査定のフローを辿ります(下記の図1)。

 このフローの中で、特許出願の内容について審査官に審査してもらうには、出願人等が特許庁に対して審査請求をする必要があります(特許法第48条の3第1項、以下、条項のみを示します)。審査請求の期間は、原則として、出願日から3年以内です。

 拒絶理由(通知)、拒絶査定は、この審査の中で、審査官・審判官から通知されるものです。

【図1】

0610-4_Fig1_ProsecutionFlow1

(2)拒絶理由通知と拒絶査定の関係

 拒絶理由及び拒絶査定は、共に、特許出願が所定の条文(例えば、新規性(29条1項各号)、進歩性(29条2項))に違反している場合に通知されるという点で共通していますが、その成り立ちが異なります。

 具体的には、拒絶理由通知とは、審査官が「現在の請求項のままでは拒絶査定になりますよ?」という警告であり(49条及び50条)、拒絶査定とは、「この出願は特許できません!」という処分を意味しているんですね。

 なお、拒絶理由通知には、拒絶査定を回避するための方策を練る機会(請求項等の補正を行ったり、認定が誤りであると意見したりすること)を、出願人に与えるという意味合いもあります。

 また、拒絶査定で注意して欲しいことは、拒絶査定が通知されても、それが「確定」しなければ、最終処分とはならない、ということです。拒絶査定が通知されて「確定」するまでの間には期間があり、対処の仕様がありますので諦めないで下さい。

拒絶理由通知と拒絶査定の回数

 次に、拒絶理由通知の回数と、拒絶査定の回数についてです。

(1)拒絶理由通知の回数(理論上:無限、実務上:1~2回程度)

 拒絶理由通知の回数ですが、理論上は無限に通知される可能性があります。これは、審査が下記のような①~④の手順でぐるぐるするためです。

 ① 特許出願の審査開始
 ② 特許出願に見出された拒絶理由を出願人に通知
 ③ 出願人による補正や意見書の提出で拒絶理由が解消
 ④ 他に拒絶理由が無いか審査を続行

 しかしながら、日本における実務では、拒絶理由通知の回数は、1~2回、多くて3回といったところでしょう。出願の多くは、上記の①~④の審査の間に、特許査定や拒絶査定の通知を受けるためです。

 なお、審査官が拒絶査定を通知する基準ですが、これは明確ではなく、審査官の裁量によるところが大きいです。「拒絶理由通知を出して、出願人とこれ以上やりとりしても拒絶理由を解消できないな」と審査官が考えたら拒絶査定を通知してくる、程度の印象で問題ないかと思います。

 もちろん、拒絶査定に対する対処(分割や拒絶査定不服審判)も残されていますから、慌てる必要はありません(対処に資金及び時間がかかることと、対処の手数が減ることには注意です)。

(2)拒絶査定の回数(理論上:無限、実務上:0回~1回程度)

 拒絶査定の通知の回数ですが、理論上は無限に通知される可能性があります。これは、拒絶査定に対する対処の拒絶査定不服審判において、拒絶査定が取り消されたうえで、さらに出願を審査に付する(審査に戻す)という処理がなされる可能性があるからです(162条第1項)。

 審査に戻ることは、拒絶理由の通知や、拒絶査定の通知等のフローに戻ることを意味していますから、拒絶査定の通知も複数回になる可能性があるわけです。

※なお、審査を担当するのは審査官で、審判を担当するのは審判官であり、審査(審査官)と審判(審判官)とは別物です。審判官は、典型的には、審査官の上級職のような立ち位置であり、審査官のベテランバージョンと考えて問題ありません。拒絶査定不服審判に到達するまで拗れた案件は、実務経験豊富な審判官が対処するんですね。

 他方で、拒絶査定の通知の実務上の回数は、0回~1回が大多数です。一般的には、拒絶査定に占める拒絶査定不服審判の請求数自体が少なく、差し戻しの判断は更に少ないです。

拒絶理由通知と拒絶査定の応答期間

 次に、拒絶理由通知と拒絶査定の応答期間について説明します。

 なお、ここに記載する応答期間等の情報は、2019年2月19日現在のものです。

(1)拒絶理由通知の応答期間

 拒絶理由通知の応答期間は、出願人が国内移住者(日本国民等)か在外者で異なり、かつ延長の期間も異なります。分かり易いように、下記の表1に国内移住者と在外者とで分けて記載しています。

【表1】

 

国内移住者

在外者

応答期間

拒絶理由通知の発送日の翌日から
60日

拒絶査定通知の発送日の翌日から
3ヶ月

延長申請時期

応答期間内

応答期間外

応答期間内

応答期間外

延長期間

2ヶ月

2ヶ月

最大3ヶ月

2ヶ月

延長申請回数

1回

1回

最大2回

1回

延長理由

特に無し

特に無し

特に無し

特に無し

延長費用

2100円/回

51000円/回

2100円/回

51000円/回

(A)表中の「応答期間外」の延長申請について(その1)

 「応答期間外」に延長申請する場合には、応答期間の末日の翌日から2か月以内に申請せねばならないことに注意して下さい。

(B)表中の「応答期間外」の延長申請について(その2)

 応答期間外における延長申請には、条件があり、初めてするもののみが可能です。例えば、応答期間内に延長申請をしていた場合に、その後の応答期間外における延長申請は認められません。

(C)拒絶査定不服審判中で通知された拒絶理由通知の応答期間の延長について

 上述した説明は、拒絶査定不服審判に係属していない状態での拒絶理由通知に関するものです。

 拒絶査定不服審判中で通知された拒絶理由通知の応答期間の延長については、上述した説明の限りでは無いので注意が必要です。

 具体的には下記のとおりです。

国内居住者(拒絶査定不服審判中で通知された拒絶理由通知の応答期間の延長)

 以下の要件1を満たすときに期間延長が認められます。延長請求は1回のみで、最大1か月の延長が認められます。

・要件1:拒絶理由通知書等で示された引用文献に記載された発明との対比実験データの取得

在外者(拒絶査定不服審判中で通知された拒絶理由通知の応答期間の延長)

 以下の要件1又は要件2を満たすときに期間延長が認められます。

延長する期間は、1回の延長請求で最大1か月であり、最大3回(3か月)の延長が認められます。ただし、要件1を理由とする延長は、1回(最大1か月)のみ認められます。

・要件1:拒絶理由通知書等で示された引用文献に記載された発明との対比実験データの取得

・要件2:審判手続書類の翻訳

 「都合により」等を理由とする延長請求は不適切であるためご注意下さい。また、「対比実験」の必要性に疑義がある場合には、審査官から事情を確認される可能性があります。

(2)拒絶査定の応答期間

 拒絶査定の応答期間は、出願人が国内移住者(日本国民等)か在外者で異なります。分かり易いように、下記の表2に国内移住者と在外者とで分けて記載しています。

 なお、拒絶査定に対する応答は、分割出願(44条第1項第3号)か、拒絶査定不服審判(121条第1項)が該当します。

【表2】

 

国内移住者

在外者

応答期間

拒絶理由通知の発送日の翌日から
3ヶ月

拒絶査定通知の発送日の翌日から
4ヶ月

延長申請時期

不責事由がなくなった日から14日以内で、かつ応答期間の経過後6ヶ月以内

不責事由がなくなった日から2ヶ月以内で、かつ応答期間の経過後6ヶ月以内

延長理由

不責事由(拒絶査定不服審判)

不責事由(拒絶査定不服審判)

(A)表中の「不責事由」について

 表中の「不責事由」とは、法律的には「その責めに帰することができない理由」を意味しています。結論から先に言いますが、不責事由が認められる可能性は0%に近いので、知識としてのみ知っておいて下さい。「不責事由」には、1)天災地変のような客観的な理由にもとづいて手続きをすることができない場合、2)通常の注意力を有する当事者が万全の注意を払ってもなお請求期間を徒過せざるを得なかったような場合は、主観的な理由による場合であっても「その責めに帰することができない場合(理由)が含まれます。

(B)期間の計算について

 例えば、4月1日が拒絶査定謄本の送達日であった場合、起算日は4月2日となり、3月後の応当日の前日である7月1日が提出期限(※開庁日であった場合)となります。2月のように、31日や30日がない月で31日や30日に該当する日が応当日に該当する場合は、その月の末日(※開庁日であった場合)に期間が満了します。なお、拒絶査定の謄本がオンライン発送の場合は、「発送日=送達日」となりますので注意してください

拒絶理由通知と拒絶査定の放置結果

 上記したように、拒絶理由通知を放置すると拒絶査定の通知が届き、さらに放置しておくと拒絶査定が確定し、原則として、特許権を取得するための門戸は閉ざされます。

拒絶理由通知への対策について

 本サイトでは、拒絶理由通知の対策として、下記に示すような記事も掲載していますので、必要に応じて参照してみて下さい。

拒絶理由通知を読んでもよく分からん!超簡単な分析方法を大公開

「新規性」の拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1

「進歩性」の拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1

「サポート要件」の拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1

「補正」ってなに?特許出願書類の一部修正及び削除等のやり方を教えます

 今回はここまでです。

よろしければ!

(1)書いてほしい記事はありますか?

 本記事を参照いただき、ありがとうございました。

  特許等に関して、書いてほしい記事等があれば、遠慮なくメールや下記のコメント入力フォームからご相談下さい。

  時間はかかるかもしれませんが、記事の作成を検討させていただきます。

(2)ご質問・ご相談・ご依頼

 また、特許出願、拒絶理由通知の悩み・ご質問などがあれば、メールや下記のコメント入力フォームからご相談下さい。答えられる範囲でお答えします。

ただし、新規の技術内容等に関するものであって、出願を検討しているものについては、絶対に「コメント入力フォーム」に記入しないで下さい。発明の新規性を喪失してしまうことを防止するためです。

 なお、私の状況により、お返事が遅くなることもありますので、その点ご了承下さい。

ArticleNo. 0610-4

この投稿へのコメント

コメントはありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL