欧州(EP)の拒絶理由(オフィスアクション)への対処方法の実務

欧州(EP)の拒絶理由への対処方法の実務

ArticleNo. 0733-1

 本サイトは、これを見た方に特許出願書類の作成等を実務レベルかつ独力で行えることを目的としています。

 本サイトの管理人は弁理士として仕事をしており、システムエンジニア・中小特許事務所・大手特許事務所・大企業知財部を経験し、みなさまのお役に立てれば光栄です。

 今回は、各国実務対応シリーズです。管理人が日々の業務で実際に対応した課題、その解決手段、解決に用いた豆知識をつらつらと記載します。実務対応を示すことで、各国での対応に困っている方の一助となればと思います。

 さて、欧州(EP)の拒絶理由への対処方法について紹介します。

この記事を参照して得られる効果

 

①.欧州(EP)の進歩性の拒絶理由への対処方法の実務を理解できます。

 

欧州の拒絶理由と資料集め

 さて、先日ですが、欧州(EP)の出願に対して拒絶理由通知を受領しました。これを中途受任で担当しましたので、そのときの対応方法等をお話しします。

 中途受任でしたので、発明の内容とかも分からず、下記の資料をまずは揃えます。

①.対応日本語出願
②.欧州(EP)の包袋(欧州明細書、過去の拒絶理由通知、その応答案、現在のクレーム(Current Claims))
③.今回の拒絶理由通知及びこれに引用されている引用文献
④.各国における拒絶理由対応資料(カンニング)

 

①.対応日本語出願

 今回は、欧州の拒絶理由対応です。欧州明細書は英語で記載されています。英語の読解は大変なので、この欧州明細書の対応日本語出願があるか探しましょう。欧州だけに出願して、日本の対応出願が無い…なんてのはほとんど無いですから、大抵は対応日本語出願が存在しているはずです。

 手元に対応日本語出願が無ければ、ファミリーで対応日本語出願の出願番号又は公開番号等を調べてダウンロードします。種々の方法がありますが、いつもお世話になっているEspacenetを使用しました。

 対応日本語出願の探し方やファミリーについては、別記事「特許の外国語の引用文献が難解?対応日本語文献を見つけよう!」を参照して下さい。

②.欧州(EP)の包袋(欧州明細書、過去の拒絶理由通知、その応答案、現在のクレーム(Current Claims))

 次に、欧州出願の包袋を見つけます。過去の経緯や、拒絶理由通知された現状のクレームを知らないと、今回の拒絶理由の応答で整合性のある受け答えができないためです。

 さて、欧州出願の包袋(欧州明細書、過去の拒絶理由通知、その応答案、現在のクレーム(Current Claims))を実際に入手する方法ですが、これもEspacenetにお世話になります。欧州出願の包袋の入手方法については別記事「欧州(EP)出願の包袋(審査書類)や各国特許文献の入手方法!」を参照して下さい。

③.今回の拒絶理由通知及びこれに引用されている引用文献

 今回の拒絶理由通知と、これに引用されている引用文献も準備します。引用文献は、拒絶理由通知に記載されており、これもEspacenetで取得できます。取得の詳細な方法は、別記事「欧州(EP)出願の包袋(審査書類)や各国特許文献の入手方法!」を参照して下さい。

④.各国における拒絶理由対応資料(カンニング)

 さて、今回の欧州(EP)の拒絶理由ですが、他の対応国(日本、米国、中国等)で出願している場合には、同じような拒絶理由を受け、かつ先に応答している可能性があります。

 そのような場合には、他国での応答を参照(カンニング)して、今回の欧州の拒絶理由に対応(応用)できるか検討します。

本願発明と欧州の拒絶理由の分析及び対処

 上記では、資料を集め、カンニングを行う方法を示しました。カンニングについては、今回の拒絶理由の応答で採用できそうになかったので、個別に詳細に分析する他なさそうでした。

 さて、本願発明ですが、クレーム(請求項)数は1~9で組成物でした。また、拒絶理由通知で指摘されていたのは、新規性違反及び進歩性違反でした。

 具体的には、クレーム1~5に新規性違反が指摘され、クレーム6~9は当業者の設計事項(容易想到)と指摘されていました。

 審査官の認定等が正しいのか、また、新規性・進歩性が出せるのかを検討するため、対比表を作成しました。

 なお、対比表の作成方法等については、別記事「『新規性』の拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1」を参照して下さい。

(1)新規性違反への対処

 対比表を作成してさらに検証したところ、審査官による新規性違反の認定、すなわち、クレーム1~5の構成の全てが、引用文献に開示されているとの認定は、妥当と判断しました。

 そこで、クレーム6の特徴をクレーム1に組み込み、新規性を確保する案を検討しました。

(2)進歩性違反への対処その1

 クレーム6の構成は、A6+B6+C6という構成でした。よく検討したところ、これらの構成のうち、A6、B6、及びC6のいずれもが引用文献に開示されていませんでした。

 この事実に基づいて、下記に示すような進歩性の検討を行いました:

 ①.クレーム6の構成を追記した新クレーム1に、引用文献と比較した有利な効果(同質で顕著な効果、異質な効果)があるか否か

 ②.本発明の効果を奏さないとする比較例(引用文献に対応するもの)が本願明細書中にあるか

 ③.クレーム6の構成を追記した新クレーム1が実施例でサポートされているか

①.クレーム6の構成を追記した新クレーム1に、引用文献と比較した有利な効果(同質で顕著な効果、異質な効果)があるか否か

 クレーム6の構成を追記した新クレーム1に係る発明には、効果が複数ありました。そして、その中のある効果が引用文献には開示されておらず、本発明は引用文献と比較して有利な効果(異質な効果)を奏していると判断しました。

 なお、同質な効果や異質な効果については、別記事「特許の進歩性で効果が同質とか異質って何?!超簡単に分かります!」を参照してみて下さい。。

②.本発明の効果を奏さないとする比較例(引用文献に対応するもの)が本願明細書中にあるか

 本発明の効果が奏されない例、すなわち、比較例が本願明細書中に記載され、かつその比較例が引用文献の技術に対応していれば、比較実験データの提出等を省略できる可能性があります。

 そこで、そのような比較例が存在しないか、本願明細書を確かめることは有効です。

 結論から先に言いますと、今回の場合には、そのような比較例はありませんでした。そこで、クライアントに比較例を作成いただくことを検討しました。

 具体的にどのような比較例を作成(追試)してもらったかは、後述します。

③.クレーム6の構成を追記した新クレーム1が実施例でサポートされているか

 明細書中の構成や従属クレーム(従属請求項)の構成を、独立クレームに追記補正する場合には、補正後の独立クレームがサポート要件を充足しているか確かめる必要があります。

 サポート要件とは、(補正後の)独立クレームの内容が、明細書の内容から般化・拡張できるか、という要件です。特許法では、公開の代償として独占権を付与しますから、明細書の内容から般化・拡張できない(つまり公開していない)場合に、独占権を付与できず、これがサポート要件として記載されているのです。

 さて、クレーム6の構成(つまり、引用文献に開示されていない構成)を追記した新クレーム1が実施例でサポートされているか、ですが、結論からいうとサポートはされていました。

 しかしながら、このクレーム6の要件には問題がありました。

 具体的には、クレーム6を追記した新クレーム1を採用すると、実施例に開示されているベストモード(最良例)の一部が外れてしまうのです。ベストモートの権利を取れないとなると、特許権をとる意味が実質的に無くなる可能性があるため、困ったのです。

 こういうときは、明細書の作成時に、サポート要件等のチェック(特に従属請求項のサポート)まで含めて行うことの大切さを痛感します…。

(3)進歩性違反への対処その2

 上記(2)で述べた問題(新クレーム1を採用すると、実施例に開示されているベストモード(最良例)の一部が外れてしまう)に対処するための検討を行いました。

 上述したように、クレーム6は、A6+B6+C6という構成からなり、これらの構成のうち、A6、B6、及びC6のいずれもが引用文献に開示されていませんでした。

 そこで、クレーム6の中のA6だけをクレーム1に追記することとしました。A6を追記した新クレーム1は、ベストモードを含めたサポート要件を充足していましたので。

 また、比較例の作成ですが、クライアントには、本願明細書の実施例に基づいて、A6の構成だけがない比較例を作成いただき、その評価もしてもらうことを依頼しました(進歩性の主張、有利な効果を示すためです)。

(4)その後の対応

 上述した方針を現地代理人(欧州代理人)に英文レターで指示して、英文の応答案(ドラフト)を作成してもらうこととしました。

 今回の欧州(EP)の拒絶理由はこれで対処できると思っているのですが、この先第2、第3の拒絶理由もくるかも知れませんから気が抜けませんね。

 今回は、ここまでです。

よろしければ!

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 本記事を参照いただき、ありがとうございました。

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  時間はかかるかもしれませんが、記事の作成を検討させていただきます。

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ただし、新規の技術内容等に関するものであって、出願を検討しているものについては、絶対に「コメント入力フォーム」に記入しないで下さい。発明の新規性を喪失してしまうことを防止するためです。

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ArticleNo. 0733-1

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