進歩性の特許拒絶理由?!指摘は2パターンを知れば十分!

進歩性の特許拒絶理由?!指摘は2パターンを知れば十分!

ArticleNo. 0622-3

 本サイトは、これを見た方に特許出願書類の作成等を実務レベルかつ独力で行えることを目的としています。

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 今回は、進歩性の特許拒絶理由における審査官の指摘を正確に把握する方法を説明します。

 技術が複雑なほど、また、審査官の指摘が長文であるほど、審査官の意図を読み難くなります。

 審査官の指摘の意図を読めなければ、適切な応答ができませんし、検討に長時間を要してしまいます

 そこで、進歩性の特許拒絶理由に応答する前段階として、審査官の指摘を迅速かつ正確に把握する必要があります。

 正確に把握すると言っても難しくはありません。進歩性の特許拒絶理由における審査官の指摘は、たったの2パターンしか無いのですから。

 なお、進歩性の特許拒絶理由の概要については、別記事「『進歩性』の特許拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1」でも説明しているので、よろしければ参照してみて下さい。

この記事を参照して得られる効果

 

①.進歩性の特許拒絶理由における審査官の指摘を迅速かつ正確に把握できるようになります。
②.指摘の正確な把握により適切な応答ができるようになります。
③.進歩性の特許拒絶理由の処理スピードが向上します。
④.拒絶理由解消に必要な対比表を作成できるようになります。

 

拒絶理由における進歩性判断の前の注意

 進歩性の拒絶理由の判断では、事前にチェックして欲しい事項(下記のチェック事項)があります。

 すなわち、審査官の認定の妥当性や、進歩性の拒絶理由が指摘されていない請求項が無いか等の事項です。

 これらのチェック結果によっては、そもそも進歩性の判断を行う必要性がなくなる可能性がありますので、是非とも確認してみて下さい。

 また、よろしければ、別記事「拒絶理由通知を読んでもよく分からん!超簡単な分析方法を大公開」も参照してみて下さい。

個別の拒絶理由に関するチェック項目
(1)審査官による拒絶理由の認定は妥当か
(2)拒絶理由が通知されていない請求項があるか
(3)拒絶理由が通知されている請求項だが、審査官からの示唆(解決策の提案)はあるか
(4)上記(1)~(3)のいずれにも該当しない場合、又はこれらのいずれかに該当しても所望する権利範囲外となる場合には、個別に解決策を練ることが可能か

 ここでは、上記の(4)「個別に解決策を練る」を選択したものとします。

進歩性の特許拒絶理由における審査官の指摘2パターン

 さて、本題です。進歩性の特許拒絶理由における審査官の指摘を迅速かつ正確に理解するために、パターン化する方法を説明します。

第1パターン:複数の引用文献同士の組み合わせでの進歩性違反

 第1パターンは、複数の引用文献同士の組み合わせでの進歩性違反を指摘してくるパターンです。

 具体的には、審査官は、主引用文献と副引用文献の組み合わせで進歩性違反を指摘してきます。

 ここで、主引用文献として選択される文献は、論理付けに最も適した文献です。

 具体的には、主引用文献は、本願発明に最近似でありながら、本願の請求項の構成の全てが開示されていない(当該構成が不足している)文献と言えます。

 また、副引用文献として選択される文献は、典型的には、上記の主引用文献で不足した構成が開示されている文献です。

 審査官は、これらの文献同士を組み合わせることにより本願の請求項の構成が充足されるから、進歩性が無いとの指摘をしてくるわけです。

 もちろん、文献同士の組み合わせには、動機付け等の一定の条件があります。

 なお、主引用文献は、複数引用されることもありますが、主引用文献(主引用発明)同士を組み合わせられないことが審査基準に明示されています(第III 部 第2 章 第2 節 進歩性)。

 審査官が指摘してくる引用文献の組み合わせは、あくまでも主引用文献と副引用文献との組み合わせのみです。

 上記の説明のみでは分かりにくいので、例示として、本願、主引用文献、及び副引用文献の関係を下記の対比表1のように示しています。

 対比表は、本発明と先行技術(引用文献)との関係を把握するのに非常に有用ですから、初学者の方には特におすすめします

 なお、この対比表1では、本願の請求項1において「基材と、前記基材に担持されている金属粒子A及び金属粒子Bとを含む、排ガス浄化触媒」と記載されていると仮定しています。

【表1】対比表その1

本願

本願発明の構成

主引用文献

副引用文献

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり

金属粒子A

同上

記載無し

金属粒子B

記載無し

【発明を実施するための形態】に記載あり
「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1等に記載あり

課題

(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

 

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

※表中の「○」及び「✕」は、それぞれ、引用文献が、本願発明の構成を充足しているか、否かを示しています。

 対比表1を説明します。

 審査官は、まず主引用文献を認定します。

 次に、主引用文献では、実施例中にも実施形態中にも「金属粒子B」の開示が無いため、ここの構成を埋めるような副引用文献を認定します。

 対比表1中では、主引用文献に金属粒子Bの開示が無いため、「✕:記載なし」と示しています。

 他方で、副引用文献には、「金属粒子B」の開示があり、その技術的意義として「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」ことが開示されています。

 さらに、主引用文献が目的とする課題は、「排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上」にあります。

 審査官は、このような条件が揃うと、「当業者であれば、主引用文献の課題(炭化水素化合物の浄化効率向上)を解決するために、副引用文献の金属粒子Bを、主引用文献に記載の発明で採用することは、容易に想到できる」などとし、課題の共通性を理由にこれらを組み合わせ、進歩性違反を指摘してきます。

※なお、引用文献同士を組み合わせるための動機付け等については、別記事「『進歩性』の拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1」で詳しく説明しています。

※対比表の作成方法
 なお、非常に重要なことですが、対比表を作成する際には、主引用文献中の「実施例」で本願に最も近い例を探し、その例と対比しましょう。
 主引用文献の実施例と対比する理由は、それが実際の実験データに基づくものであり、その例に記載の構成には確実に新規性が無いと判断されるためです。
 主引用文献中に「実施例」の項目(【実施例】)の記載が無い場合には、明細書中の項目の【発明を実施するための形態】の記載と対比しましょう。
 【発明を実施するための形態】の記載には、通称「一行記載」として、本願の請求項の構成が記載されている可能性があります。
 「一行記載」が存在している場合には、当該構成の技術的意義(その構成の効果や効果を奏するメカニズム等)を参照します。
 この構成の技術的意義が、対応する本願の請求項の構成の技術的意義に相当しないものであれば、当該主引用文献に当該構成が開示されていないものと判断することができます
 ただし、この構成の技術的意義が、本願の出願時に公知でないことを確認して下さい。

 

第2パターン:主引用文献と設計事項に基づく進歩性違反

 審査官が指摘する進歩性の特許拒絶理由の2パターンのうち、第2パターンは、主引用文献と、当業者の創作の範囲にある設計事項とに基づいて進歩性違反を指摘してくるパターンです。

 上記したように、進歩性における主引用文献とは、本願の請求項の構成の全てが開示されていない(構成が不足している)文献を意味しています。

 主引用文献1つのみに基づく進歩性違反の指摘では、審査官は、主引用文献で不足している構成が最適材料の選択や設計事項等でなんとでもなる範囲のものであり、当業者であれば容易想到である、と認定してきます。

 上記の説明のみでは分かりにくいので、例示として、本願、主引用文献、及び副引用文献の関係を下記の表2のように示しています。

 この例示では、本願の請求項1において「基材と、前記基材に担持されている金属粒子A及び金属粒子Bとを含む、排ガス浄化触媒。」と記載されていると仮定しています。

【表2】対比表その2

本願

本願発明の構成

主引用文献

公知技術

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

 

 

金属粒子A

同上

 

 

金属粒子B

記載無し

金属Bには炭化水素化合物の分解作用あり。

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

 

 

課題

(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

 

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

※表中の「○」及び「✕」は、それぞれ、引用文献が、本願発明の構成を充足しているか、否かを示しています。

 対比表2を説明します。

 審査官は、まずは主引用文献を認定します。

 次に、主引用文献では、実施例中にも実施形態中にも「金属粒子B」の開示が無いため、ここの構成を埋めるような公知技術を認定します。

 対比表2中では、主引用文献に金属粒子Bの開示が無いため、「✕:記載なし」と示しています。

 進歩性を否定するには、主引用文献で不足した構成の「金属粒子B」を補う必要があります

 そこで、審査官は、この「金属(粒子)B」を公知技術の中で調査し、これが「炭化水素化合物の分解」作用を有することが判明したとします(ただし、本願の出願時の技術常識であることが必要)。

 本願の出願時の技術常識において「金属粒子B」の「炭化水素化合物の分解」が公知であると分かれば、課題の共通性等の動機付けにより、「排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上」を課題とする主引用文献に「金属粒子B」を適用できる、と指摘してきます。

まとめ

 いかがでしたでしょうか?

 進歩性の特許拒絶理由における審査官の指摘はたったの2パターン、すなわち、①「複数の引用文献同士の組み合わせでの進歩性違反」及び②「主引用文献1つのみに基づく進歩性違反」の指摘しかないことがご理解いただけたかと思います。

 どんなに技術や指摘が複雑であっても、この2パターンに落とし込めば審査官の指摘の本質を容易に把握でき、適切な応答が可能になります。

 また、進歩性の特許拒絶理由を受けた際に上記のような対比表を作成することは、本発明と先行技術(引用文献)との関係を把握するのに非常に有用なことも紹介しました。

 下記の記事では、今回検討した題材を用いて、実際に進歩性の特許拒絶理由に対処する方法を紹介していますので、是非参照してみて下さい。

・「進歩性の特許拒絶理由?!超簡単な対処法3パターン!」

 今回はここまでです。

よろしければ!

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 本記事を参照いただき、ありがとうございました。

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ただし、新規の技術内容等に関するものであって、出願を検討しているものについては、絶対に「コメント入力フォーム」に記入しないで下さい。発明の新規性を喪失してしまうことを防止するためです。

 なお、私の状況により、お返事が遅くなることもありますので、その点ご了承下さい。

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