進歩性の特許拒絶理由?!超簡単な対処法3パターン!

進歩性の特許拒絶理由?!超簡単な対処法3パターン!

ArticleNo. 0622-4

 本サイトは、これを見た方に特許出願書類の作成等を実務レベルかつ独力で行えることを目的としています。

 本サイトの管理人は弁理士として仕事をしており、システムエンジニア・中小特許事務所・大手特許事務所・大企業知財部を経験し、みなさまのお役に立てれば光栄です。

 今回は、進歩性の特許拒絶理由の超簡単な対処法をお教えします。

 プロの実務者が実践している王道の対処法です。

 以下、ちょっと長い前置きです(飛ばしても構いません)。

 特許明細書は、最新技術のカタマリであり、さらに難解かつ長文を含む法律文書です。

 これに対して、特許審査官が指摘した特許拒絶理由の解消には、技術的要素、法律要素、及び実務者の経験を総動員する必要があることは言うまでもありません。

 このように聞くと非常に難しく感じるかもしれませんが、実は、進歩性の特許拒絶理由の王道の対処法はたったの3パターンしかないんです。

 このパターンに当てはめを行えば、進歩性違反の指摘を解消できるか否か、すぐに判断できるようになります。

 なお、進歩性の特許拒絶理由の概要については、別記事「『進歩性』の特許拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1」でも説明しているので、よろしければ参照してみて下さい。

この記事を参照して得られる効果

 

①.進歩性の特許拒絶理由の対処法3パターンを理解できます。
②.対処法を実践できるようになります。
③.進歩性の特許拒絶理由の処理スピードが向上します。
④.拒絶理由解消に必要な対比表を作成できるようになります。

 

拒絶理由における進歩性判断の前の注意

 進歩性の拒絶理由の判断では、事前にチェックして欲しい事項(下記のチェック事項)があります。

 すなわち、審査官の認定の妥当性や、進歩性の拒絶理由が指摘されていない請求項が無いか等の事項です。

 これらのチェック結果によっては、そもそも進歩性の判断を行う必要性がなくなる可能性がありますので、是非とも確認してみて下さい。

 また、よろしければ、別記事「拒絶理由通知を読んでもよく分からん!超簡単な分析方法を大公開」も参照してみて下さい。

個別の拒絶理由に関するチェック項目
(1)審査官による拒絶理由の認定は妥当か
(2)拒絶理由が通知されていない請求項があるか
(3)拒絶理由が通知されている請求項だが、審査官からの示唆(解決策の提案)はあるか
(4)上記(1)~(3)のいずれにも該当しない場合、又はこれらのいずれかに該当しても所望する権利範囲外となる場合には、個別に解決策を練ることが可能か

 ここでは、上記の(4)「個別に解決策を練る」を選択したものとします。

審査官の指摘2パターン

 進歩性の特許拒絶理由の対処法について説明する前に、前提条件として、審査官の指摘パターンを整理しましょう。

 進歩性の特許拒絶理由における審査官の指摘は2パターンで示すことができます。

 分かり易さのために、下記で例示して示します。

※審査官の指摘パターンについては、進歩性の特許拒絶理由に応答する前段階の分析についての別記事「進歩性の特許拒絶理由?!指摘は2パターンを知れば十分!」で詳細に説明していますので、この記事もよろしければ参照してみてください。

第1パターン:複数の引用文献同士の組み合わせでの進歩性違反

 審査官は、第1パターンとして、複数の引用文献同士の組み合わせで進歩性違反を指摘してきます。

 どういうことか、下記で例示しています。

【表1】対比表その1

本願

本願発明の構成

主引用文献

副引用文献

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり

金属粒子A

同上

記載無し

金属粒子B

記載無し

【発明を実施するための形態】に記載あり
「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1等に記載あり

課題
(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

 

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

 ※表中の「○」及び「✕」は、それぞれ、引用文献が、本願発明の構成を充足しているか、否かを示しています。

 審査官は、主引用文献では、実施例中にも実施形態中にも「金属粒子B」の開示が無いため、ここの構成(金属粒子B)を埋めるような副引用文献を認定してきます。

 対比表1に示すように、主引用文献が目的とする課題は、「排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上」であり、副引用文献には、「金属粒子B」の技術的意義として「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」ことが開示されています。

 審査官は、これらの共通性(課題の共通性)に基づいて、主引用文献と副引用文献の組み合わせが可能であり、よって、これらの組み合わせが、本願発明を充足すると認定します。

第2パターン:主引用文献と設計事項に基づく進歩性違反

 審査官が指摘する進歩性の特許拒絶理由の2パターンのうち、第2パターンは、主引用文献と、当業者の創作の範囲にある設計事項に基づいて進歩性違反を指摘してくるパターンです。

 どういうことか、下記で例示しています。

【表2】対比表その2

本願

本願発明の構成

主引用文献

公知技術

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

 

 

金属粒子A

同上

 

 

金属粒子B

記載無し

金属Bには炭化水素化合物の分解作用あり。

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

 

 

課題
(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

 

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

 審査官は、まずは主引用文献を認定します。

 次に、主引用文献では、実施例中にも実施形態中にも「金属粒子B」の開示が無いため、この構成を埋めるような公知技術を補う必要があります

 そこで、審査官は、この「金属(粒子)B」を公知技術の中で調査し、これが「炭化水素化合物の分解」作用を有することが判明したとします(ただし、本願の出願時の技術常識であることが必要)。

 本願の出願時の技術常識において「金属(粒子)B」の「炭化水素化合物の分解」が公知であると分かれば、課題の共通性等の動機付けにより、「排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上」を課題とする主引用文献に「金属粒子B」を適用できる、と指摘してきます。

進歩性の主張で考慮する2つの要素について

 実は、上記した進歩性の特許拒絶理由における審査官の指摘2パターンは、主引用文献で開示されていない構成を副引用文献又は公知技術から探してくる、という点で共通しています。

 そして、進歩性の程度には、下記の①及び②の強弱の兼ね合いがあります。

①:主引用文献と、主引用文献で開示されていない構成を含む副引用文献又は公知技術との組み合わせの程度
②:発明の効果の度合

 組み合わせの度合が強い(組み合わせを否定し難い)場合には、当業者の予測困難性と、発明の効果が凄い(顕著)ことを示せれば進歩性の主張に有利となります。

 他方、組み合わせの度合が弱い(組み合わせの否定が容易である)場合には、発明の効果が有利(少しでも優れている)であれば進歩性の主張に有利となります。

 これから示す、進歩性の特許拒絶理由の対処法3パターンは、それぞれ、上記の①及び②を考慮した主張だと思って下さい。

審査官の指摘への対処法第1パターン:顕著な効果のみでの主張

 対処法の第1パターンは、主引用文献と副引用文献又は公知技術との組み合わせを否定できなかったという前提のもとで、本願発明の顕著な効果のみで進歩性の主張を行うパターンです。

 組み合わせの否定の度合が弱いことから、本発明の効果が強い(凄い)ことを示すパターンとも言えます。

 この第1パターンは、上記組み合わせについて否定できていないことから、当業者でも予測困難な顕著な効果、すなわち、「同質だが際立って優れた効果」か、「異質な効果」を示す必要があります。

 この場合、実務的には、「同質だが際立って優れた効果」よりも「異質な効果」の方が進歩性が認められやすいです。

 より新規な効果(課題)である「異質な効果」の方が、当業者の予測困難性を主張し易いためです。

※同質だが際立って優れた効果
 「同質」とは、本願発明の効果(課題)が先行技術文献(引用文献)に開示された引用発明の効果(課題)とその種類的に同一であることを意味しています。
 したがって、「同質だが際立って優れた効果」とは、種類的に同一の効果ではあるが、その中でもより優れた効果である、ということを意味しています。
 「同質」という点で本願発明の効果(課題)の種類自体は先行技術文献に開示されていますから、より顕著であること、すなわち「際立って優れ」ていることを示す必要があるんですね
 なお、典型的には、「同質だが際立って優れた効果」は「異質な効果」よりも進歩性が認められ難いです
 そのため、「同質だが際立って優れた効果」を示す請求項の構成要件には、ある特定の数値範囲や、ある特定の化合物でしか「際立って優れた」効果を示さない、という臨界性が要求されます。

 

※異質な効果
 「異質な効果」とは、本願発明の効果(課題)が、先行技術文献(引用文献)に開示されてる引用発明の効果と一致しないことを意味しています。
 「異質な効果」は、そもそも先行技術文献に開示されていませんから、当業者にとって予測困難と主張し易くなりますので、進歩性の主張に有利です。

 以下、第1パターンの顕著な効果のみでの主張について、上記した対比表その1を用いて説明します。

 下記の対比表その1を参照して下さい。

【表1】対比表その1

本願

本願発明の構成

主引用文献

副引用文献

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり

金属粒子A

同上

記載無し

金属粒子B

記載無し

【発明を実施するための形態】に記載あり
「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1等に記載あり

課題
(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

 

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

 上記の対比表その1では、本願発明の効果において「排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上」が開示されており、実は、これが、主引用文献及び副引用文献に開示されていない効果(課題)なんですね。

 すなわち、本願発明の「排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上」の効果は、「異質な効果」であり、本願発明は、主引用文献及び副引用文献に開示されていない課題を解決するものですから、この点を意見書で主張しましょう。

 また、本願発明の効果が、主引用文献、又は副引用文献に記載の発明の効果より優れている(有利な効果である)ことを示す必要があります。

 このため、有利な効果を奏することを論理的に説明するか、かつ/又はそのための比較例を用意しましょう。

 比較例の用意としては、下記の比較例①及び②を用意し、かつこれらの「窒素酸化物の浄化効率」を示し、これと比較して、本願発明の「窒素酸化物の浄化効率」が優れていることを主張するのがより好ましいです。

①:金属粒子Bが無い例(基材及び金属粒子Aからなる排ガス浄化触媒)
②:金属粒子Aが無い例(基材及び金属粒子Bからなる排ガス浄化触媒)

 なお、これらに対応する比較例が、本願明細書中に記載してあれば、比較例の追試を行う必要はありません。

 また、比較例の作り方としては、実施例を一部改変したものであって、その他の構成は当該実施例と同じように作るのが好ましいです。

 例えば、上記の①の例で言えば、所定の実施例と比較して、金属粒子Bが無いことを除き、その他の組成・数量等を一致させるように比較例を作成して下さい。

審査官の指摘への対処法第2パターン:主引用文献及び副引用文献に開示の無い構成の追加補正に基づく主張

 対処法の第2パターンは、主引用文献と副引用文献との組み合わせを否定できなかったという前提のもとで、これらの文献に開示の無い構成を本願の請求項に追加補正するパターンです。

 補正前では組み合わせの否定の度合が弱いことから、補正後で組み合わせの否定の度合を強くし、本発明の効果を示すパターンとも言えます。

 これらの文献に開示の無い構成を本願の請求項に追加補正するということは、主引用文献と副引用文献とを組み合わせても、そもそも本願の補正後の請求項の構成を充足しないということです。

 したがって、当業者であっても、現在示されている引用文献から、本願の補正後の請求項には容易に想到できないと主張することができるんですね。

 以下、第2パターンの主引用文献及び副引用文献に開示の無い構成の追加補正に基づく主張について、上記した対比表その1を改変して説明します。

 下記を参照して下さい。

構成番号3-1:数値限定(内的付加)の場合

【表3】対比表その1(補正その1)

本願

本願発明の構成

主引用文献

副引用文献

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり

金属粒子A

同上

記載無し

金属粒子B

記載無し

【発明を実施するための形態】に記載あり
「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」

3-1

金属粒子Aの含有量が、金属粒子A及び金属粒子Bの総質量に基づいて、10質量%以上30質量%以下

×

記載無し

×

記載無し

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1等に記載あり

課題
(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

 

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

 上記の対比表その1(補正その1)では、構成の番号3-1として、「金属粒子Aの含有量が、金属粒子A及び金属粒子Bの総質量に基づいて、10質量%以上30質量%以下」であることが追記されています。

 当該構成は、主引用文献及び副引用文献に開示されていない構成(数値限定)であることを意見書で主張しましょう。

 また、本願発明の効果が、主引用文献及び副引用文献の組み合わせの効果より優れている(有利な効果である)ことを示す必要があります。

 このため、有利な効果を奏することを論理的に説明するか、かつ/又はそのための比較例を用意しましょう。

 比較例の用意としては、下記の比較例③及び④を用意し、かつこれらの「窒素酸化物の浄化効率」を示し、これと比較して、本願発明の「窒素酸化物の浄化効率」が優れていることを主張するのがより好ましいです。

③:金属粒子Aの含有量が、金属粒子A及び金属粒子Bの総質量に基づいて、10質量%未満の例

④:金属粒子Aの含有量が、金属粒子A及び金属粒子Bの総質量に基づいて、30質量%以下超の例

 なお、これらの例(10質量%未満の例、30質量%以下超の例)は、補正前の実施例の中でも悪い実施例を示しており、換言すれば、この例が実施例として、本願明細書中に記載されている可能性があります。

 この場合には、本願明細書中の例の対比のみで、補正後の本願発明の「窒素酸化物の浄化効率」がより優れていることを示せるでしょう(もちろん、明細書で実施例⇒比較例の補正も必要です)。

構成番号3-2:別の構成の追加(外的付加)の場合

【表4】対比表その1(補正その2)

本願

本願発明の構成

主引用文献

副引用文献

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり

金属粒子A

同上

記載無し

金属粒子B

記載無し

【発明を実施するための形態】に記載あり
「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」

3-2

金属粒子C

×

記載無し

×

記載無し

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1等に記載あり

課題
(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

 

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

 上記の対比表その1(補正その2)では、構成の番号3-2として、「金属粒子C」が追記されています。

 当該構成は、主引用文献及び副引用文献に開示されていない構成(数値限定)であることを意見書で主張しましょう。

 また、本願発明の効果が、主引用文献及び副引用文献の組み合わせの効果より優れている(有利な効果である)ことを示す必要があります。

 このため、有利な効果を奏することを論理的に説明するか、かつ/又はそのための比較例を用意しましょう。

 比較例の用意としては、下記の比較例⑤を用意し、かつこの例の「窒素酸化物の浄化効率」を示し、これと比較して、本願発明の「窒素酸化物の浄化効率」が優れていることを主張するのがより好ましいです。

⑤:金属粒子Cが無い例(基材、金属粒子A、及び金属粒子Bからなる排ガス浄化触媒)

 なお、この例は、補正前の実施例の中でも悪い実施例を示しており、換言すれば、この例が実施例として、本願明細書中に記載されている可能性があります。

 この場合には、本願明細書中の例の対比のみで、補正後の本願発明の「窒素酸化物の浄化効率」がより優れていることを示せるでしょう(もちろん、明細書で実施例⇒比較例の補正も必要です)。

審査官の指摘への対処法第3パターン:主引用文献と副引用文献との組み合わせの否定

 対処法の第3パターンは、主引用文献と副引用文献との組み合わせを否定し、かつ、各引用文献に対する本願発明の有利な効果を示したうえで進歩性の主張を行うパターンです。

 組み合わせの否定の度合が強く、本発明の効果をさらっと示すパターンとも言えます。

主引用文献と副引用文献との組み合わせの度合の強さ

 主引用文献と副引用文献との組み合わせの否定とは、典型的には、①「進歩性が否定される方向に働く要素」(技術分野の関連性、課題の共通性、作用・機能の共通性、引用発明の内容中の示唆)が無いことを示すことや、②阻害要因を示すことを意味しています。

 ここで覚えておいて欲しいことは、①の主張(進歩性否定要素のさらなる否定)よりも②の主張(阻害要因)の方が引用文献の組み合わせの否定には強いということです。

 上記したように、「進歩性が否定される方向に働く要素」は、複数あるわけです。

 してみると、審査官が、「進歩性が否定される方向に働く要素」に係る諸事情に基づき、主引用文献に対して、副引用文献を組み合わせるロジック、又は技術常識を組み合わせるロジックも複数あることになります。

 意見書では、典型的には、審査官の組み合わせのロジックを否定するわけですが、一つのロジックを否定しても、他のロジックでさらに進歩性を否定してくる可能性があることになります。

 してみると、上記の①の主張(進歩性否定要素のさらなる否定)では、現状の拒絶理由に対応できても将来的な拒絶理由に対応できない可能性があるんですね。

 他方で、上記の②の主張(阻害要因)は、主引用文献に対して、副引用文献を組み合わせるロジック、又は技術常識を組み合わせるロジックを構築できないことの決定打となりますので、可能であればこちらを推奨します。

※阻害要因
 阻害要因とは、副引用発明(文献)を主引用発明(文献)に適用することを阻害する事情があることを意味しています。
 阻害要因としては、副引用発明が以下のようなものであることが、審査基準(第III 部 第2 章 第2 節 進歩性)に例示されています。
(i) (副引用発明(文献)が)主引用発明に適用されると、主引用発明がその目的に反する(主引用発明の効果が奏されない)ものとなるような副引用発明
(ii) (副引用発明(文献)が)主引用発明に適用されると、主引用発明が機能しなくなる副引用発明
(iii) 主引用発明(中の記載)がその(副引用発明(文献)の)適用を排斥しており、採用されることがあり得ないと考えられる副引用発明
(iv) 副引用発明を示す刊行物等に副引用発明と他の実施例とが記載又は掲載され、主引用発明が達成しようとする課題に関して、作用効果が他の実施例より劣る例として副引用発明が記載又は掲載されており、当業者が通常は適用を考えない副引用発明

 審査官は、本願発明の技術分野に詳しいとしても、発明者ほど当該技術分野に詳しいわけではありません

 また、審査官には、拒絶理由の処理件数の多さから、審査に見落としが無いとは言えません

 そのため、審査官の指摘した主引用文献と副引用文献との組み合わせのロジックについて、否定的な見解(阻害要因)を主張できる余地が出てくるんですね。

 阻害要因の具体的な例示については、審査基準の「第III 部 第2 章 第2 節 進歩性」に記載がありますので、ここでは省略します。

各引用文献に対する本願発明の有利な効果を示す

 上記したように組み合わせの否定の度合が強いので、本発明の効果をさらっと示します

 具体的には、前提条件として上記で主引用文献と副引用文献との組み合わせを否定しているので、主引用文献及び副引用文献のそれぞれに対して、有利な効果を主張します。

 上記の組み合わせを否定できていない状態で、主引用文献及び副引用文献のそれぞれに対して、有利な効果を主張しても的外れなロジックとなるので注意して下さい。

 有利な効果の主張では、主引用文献及び副引用文献に対して本発明が有利な効果を奏することを論理的に明細書中の言葉で説明するか、主引用文献に対応する比較例、及び副引用文献に対応する比較例を作成して対比することが挙げられます。

 主張としては、比較例との対比(後者)の方が好ましいですね。言葉で説明せずとも明らかな事実(比較例)を示せますので。

 以下、第3パターンの主引用文献と副引用文献との組み合わせの否定に基づく主張について、上記した対比表その1を改変して説明します。

 下記を参照して下さい。

【表5】対比表その1(改変)

本願

本願発明の構成

主引用文献

副引用文献

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり

金属粒子A

同上

記載無し

金属粒子B

記載無し

【発明を実施するための形態】に記載あり
「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」
「ただし、金属粒子Bは、金属Aが存在すると互いに相互作用して失活し易くなる」

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1等に記載あり

課題
(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

 

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

 上記の対比表その1(改変)では、「ただし、金属粒子Bは、金属Aが存在すると互いに相互作用して失活し易くなる」ことが追記されています。

 この記載では、「金属粒子B」を主引用文献に適用しても、主引用文献の目的(効果)である「排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上」には寄与せず、むしろその目的に反するものとなることが読み取れます。

 したがって、意見書では、この点について、主引用文献と副引用文献との組み合わせにおいて阻害要因があることを主張しましょう。

 また、意見書では、さらに本願発明の効果が、主引用文献及び副引用文献のそれぞれの効果より優れている(有利な効果である)ことを示す必要があります。

 このため、有利な効果を奏することを論理的に説明するか、かつ/又はそのための比較例を用意しましょう。

 比較例の用意としては、下記の比較例①及び②を用意し、かつこれらの「窒素酸化物の浄化効率」を示し、これと比較して、本願発明の「窒素酸化物の浄化効率」が優れていることを主張するのがより好ましいです。

①:金属粒子Bが無い例(基材及び金属粒子Aからなる排ガス浄化触媒)
②:金属粒子Aが無い例(基材及び金属粒子Bからなる排ガス浄化触媒)

 なお、これらに対応する比較例が、本願明細書中に記載してあれば、比較例の追試を行う必要はありません。

 また、比較例の作り方としては、実施例を一部改変したものであって、その他の構成は当該実施例と同じように作るのが好ましいです。

 例えば、上記の①の例で言えば、所定の実施例と比較して、金属粒子Bが無いことを除き、その他の組成・数量等を一致させるように比較例を作成して下さい。

その他の注意点

 なお、手続補正書を用いて補正を行う場合には、侵害発見容易性やサポート要件充足性についても確認して下さい。

 補正をしても、補正後の請求項において侵害発見が容易でないと見込まれる場合には、将来的な権利行使において障害となります。

 また、補正後の請求項においてサポート要件を充足していないと、結局のところ、本願は拒絶理由や無効理由を包含していることとなり、権利化できなかったり、権利化できても無効とされる可能性があります。

 サポート要件については、参考までに、別記事「『サポート要件』の拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1」も参照してみて下さい。

 今回はここまでです。

よろしければ!

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 本記事を参照いただき、ありがとうございました。

  特許等に関して、書いてほしい記事等があれば、遠慮なくメールや下記のコメント入力フォームからご相談下さい。

  時間はかかるかもしれませんが、記事の作成を検討させていただきます。

(2)ご質問・ご相談・ご依頼

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ただし、新規の技術内容等に関するものであって、出願を検討しているものについては、絶対に「コメント入力フォーム」に記入しないで下さい。発明の新規性を喪失してしまうことを防止するためです。

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