特許の進歩性で効果が同質とか異質って何?!超簡単に分かります!

特許の進歩性で効果が同質とか異質って何?!超簡単に分かります!

ArticleNo. 0622-7

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 今回は、審査基準にある有利な効果、特に、同質な効果、異質な効果について説明します。

 有利な効果の主張は、数値限定発明や選択発明の進歩性の主張で特に重要ですので、ここでしっかりと理解していただき、拒絶理由等の対策に活かしていただければと思います。

この記事を参照して得られる効果

 

①.同質な効果・異質な効果について理解できます。

 

同質な効果・異質な効果とは

(1)同質な効果・異質な効果の概要

 特許の進歩性の主張では、典型的には、その特許発明の凄さを示すことが好ましいです。

 特許発明の凄さは、その特許発明(以下、本願発明)の効果と、本願発明に最近似の先行技術文献に開示された引用発明の効果とを対比し、その効果の差異で示すのが一般的です。

 すなわち、本願発明の効果が引用発明の効果よりも優れている場合(有利な効果)には、これを進歩性で主張することができます。

 この有利な効果とは、同質な効果・異質な効果の総称です。

(2)審査基準における同質な効果・異質な効果

 審査基準の「第III 部 第2 章 第2 節 進歩性」には、有利な効果の説明として、下記のように記載されています。

3.2.1 引用発明と比較した有利な効果
「…(中略)…ここで、引用発明と比較した有利な効果とは、発明特定事項によって奏される効果(特有の効果)のうち、引用発明の効果と比較して有利なものをいう。
…(中略)…引用発明と比較した有利な効果が、例えば、以下の(i)又は(ii)のような場合に該当し、技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものであることは、進歩性が肯定される方向に働く有力な事情になる。
(i)
請求項に係る発明が、引用発明の有する効果とは異質な効果を有し、この効果が出願時の技術水準から当業者が予測することができたものではない場合
(ii)
請求項に係る発明が、引用発明の有する効果と同質の効果であるが、際だって優れた効果を有し、この効果が出願時の技術水準から当業者が予測することができたものではない場合

※なお、上記で言う「発明特定事項」とは、構成や構成要件と読み替えて問題ありません(構成や構成要件は、数値や部材、組成等、発明を構成するパーツのことです)。

 審査基準では、同質な効果や異質な効果についての詳細な記載や具体例は無く、同質な効果・異質な効果の判断は、容易ではありません。

 それでは、これらの効果はどのように判断するのでしょうか?

 これを知るためには、まず、(1)引用発明、及び(2)引用発明が有する効果、について詳細に理解する必要があります。

(3)引用発明

 審査基準にいう引用発明とは、実務的には、下記の①-1~①-3のいずれかと判断されます。

 ①-1:主引用文献に開示されている構成の組み合わせからなる発明
 ①-2:主引用文献に開示されている構成の組み合わせに、副引用文献に開示されている構成を更に組み合わせたものからなる発明(ただし、組み合わせの動機付け、例えば、課題の共通性等が必要)
 ①-3:主引用文献に開示されている構成の組み合わせに、本願の出願時の技術常識に基づく構成を更に組み合わせたものからなる発明(ただし、組み合わせの動機付け、例えば、課題の共通性等が必要)

(4)引用発明が有する効果

 引用発明が有する効果は、上記の①-1~①ー3の発明が有する効果と判断されますが注意点があります。

 具体的には、引用発明が有する効果は、引用発明を構成している一の構成要件又は複数の構成要件が奏する効果であって、かつ一又は複数の構成要件がその効果を奏することが主引用文献等に開示されている必要があります

 換言すると、主引用文献等に開示されている効果だからといって、引用発明の効果であるとは言えないことがあるんですね

 下記の表1及び表2で例示して示します。

本願発明が引用発明と同質な効果を奏する例その1

【表1】対比表:本願発明が引用発明と同質な効果を奏する例その1

本願

本願発明の構成

主引用文献

副引用文献

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり

金属粒子A

同上

記載無し

金属粒子B

記載無し

【発明を実施するための形態】に記載あり
「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」
「また、金属粒子Bは、排ガス中の窒素酸化物の浄化効率を向上させる」

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1等に記載あり

課題
(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

 

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

 上記の対比表その1において、審査官が、本願発明と主引用文献に開示の主引用発明(以下、主引用発明)との相違点である「金属粒子B」を、副引用文献に開示の副引用発明(以下、副引用発明)の適用によって、本願発明の構成が達成されると指摘してきたと仮定します。

 主引用発明に副引用発明を適用する動機付けは、課題の共通性(炭化水素化合物の浄化効率の向上)です。

 また、副引用文献には、「金属粒子B」が、「炭化水素化合物」だけでなく「窒素酸化物」の浄化効率を向上させる旨、記載されています。

 したがって、主引用文献及び副引用文献に開示の構成の組み合わせに基づく引用発明は、「排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上」を達成すると読めますから、本願発明が引用発明と同質な効果を奏する、と言えます。

本願発明が引用発明と同質な効果を奏する例その2

【表2】対比表:本願発明が引用発明と同質な効果を奏する例その2

本願

本願発明の構成

主引用文献

副引用文献

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり

金属粒子A

同上

記載無し

金属粒子B

記載無し

【発明を実施するための形態】に記載あり
「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1等に記載あり

課題
(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

 上記の対比表その1において、審査官が、本願発明と主引用文献に開示の主引用発明(以下、主引用発明)との相違点である「金属粒子B」を、副引用文献に開示の副引用発明(以下、副引用発明)の適用によって、本願発明の構成が達成されると指摘してきたと仮定します。

 主引用発明に副引用発明を適用する動機付けは、上記の「本願発明が引用発明と同質な効果を奏する例その1」で示した課題の共通性と同様です。

 主引用文献には、「炭化水素化合物」だけでなく「窒素酸化物」の浄化効率を向上させる旨、記載されています。

 したがって、主引用文献及び副引用文献に開示の構成の組み合わせに基づく引用発明は、「排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上」を達成すると読めますから、本願発明が引用発明と同質な効果を奏する、と言えます。

本願発明が引用発明と異質な効果を奏する例

【表3】対比表その3:本願発明が同質な効果を奏する例

本願

本願発明の構成

主引用文献

副引用文献

番号

内容

請求項1

基材

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】の実施例1等に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり

金属粒子A

同上

記載無し

金属粒子B

記載無し

【発明を実施するための形態】に記載あり
「金属粒子Bは、排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率を向上させる」

排ガス浄化触媒

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1に記載あり

【発明を実施するための形態】に記載あり
【実施例】実施例1等に記載あり

課題
(効果)

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

排ガス中の窒素酸化物の浄化効率の向上

 

排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上

 

 上記の対比表その1において、審査官が、本願発明と主引用文献に開示の主引用発明(以下、主引用発明)との相違点である「金属粒子B」を、副引用文献に開示の副引用発明(以下、副引用発明)の適用によって、本願発明の構成が達成されると指摘してきたと仮定します。

 主引用発明に副引用発明を適用する動機付けは、課題の共通性(窒素酸化物の浄化効率の向上)です。

 副引用文献には、「窒素酸化物」の浄化効率を向上させる旨記載されていますが、これは、「金属粒子B」それ自体によって生じる効果ではありません。

 したがって、主引用文献及び副引用文献に開示の構成の組み合わせに基づく引用発明は、「排ガス中の炭化水素化合物の浄化効率向上」を達成すると読めますが、「排ガス中の窒素酸化物の浄化効率向上」を達成するとは読めませんから、本願発明は引用発明と異質な効果を奏する、と言えます。

(5)効果の対比の注意点

 さて、ここまでで同質な効果、異質な効果についてご理解いただけたかと思います。

 上記では、効果の対比を例示しましたが、実務では、もう少し詳細な検討が必要となります。

 例えば、本願発明が開示された明細書で「排ガス浄化能力の向上」が効果として開示されているとしましょう。

 「排ガス」には、いろんな成分、例えば、窒素酸化物や炭化水素化合物などが含まれているため、「排ガス浄化能力の向上」の記載だけでは、どの成分の浄化能力が向上したのか不明です。

 したがって、明細書の一部のみでなく、明細書全体を参照して、発明の効果(例えば「排ガス浄化能力の向上」)の中身を分析(例えば、測定方法・評価方法等)したうえで、主引用文献等に開示された引用発明の効果と対比する必要があるんですね。

 この点、効果の対比を行ううえで注意していただければと思います。

 その他、特許の進歩性の検討については、下記の記事も参照してみて下さい。

・「『進歩性』の拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1

・「材料と製法が本発明のものと同じだったら進歩性が無い?対処法を大公開!

・「進歩性の特許拒絶理由?!指摘は2パターンを知れば十分!

・「進歩性の特許拒絶理由?!超簡単な対処法3パターン!

・「特許の進歩性の課題の共通性って何?!超簡単に分かります!

 今回はここまでです。

よろしければ!

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