特許での数値限定発明の進歩性の判断!?超簡単に分かります!

特許での数値限定発明の進歩性の判断!?超簡単に分かります!

ArticleNo. 0622-8

 本サイトは、これを見た方に特許出願(特許申請)書類の作成等を実務レベルかつ独力で行えることを目的としています。
本サイトの管理人は弁理士として仕事をしており、システムエンジニア・中小特許事務所・大手特許事務所・大企業知財部を経験し、みなさまのお役に立てれば光栄です。

 今回は、特許での数値限定発明の進歩性について説明します。

 数値限定発明の進歩性の主張には、有利な効果の主張が好ましいです。ここでしっかりと理解していただき、拒絶理由等の対策に活かしていただければと思います。

この記事を参照して得られる効果

 

①.数値限定発明について理解できます。
②.数値限定発明の進歩性について理解できます。

 

数値限定発明

 数値限定発明は、審査基準の「第III 部 第2 章 第4 節 特定の表現を有する請求項等についての取扱い」に記載されていますので、審査基準を参照しつつ、詳細に説明します。

審査基準の数値限定発明とその解説

6. 数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合
6.1
請求項に係る発明の認定
 請求項に数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合も、通常の場合と同様に請求項に係る発明を認定する(「第3 節 新規性・進歩性の審査の進め方」の2.参照)
6.2
進歩性の判断
 請求項に数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合において、主引用発明との相違点がその数値限定のみにあるときは、通常、その請求項に係る発明は進歩性を有していない。実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは、通常、当業者の通常の創作能力の発揮といえるからである。
 しかし、請求項に係る発明の引用発明と比較した効果が以下の(i)から(iii)までの全てを満たす場合は、審査官は、そのような数値限定の発明が進歩性を有していると判断する。
 (i) その効果が限定された数値の範囲内において奏され、引用発明の示された証拠に開示されていない有利なものであること。
 (ii) その効果が引用発明が有する効果とは異質なもの、又は同質であるが際だって優れたものであること(すなわち、有利な効果が顕著性を有していること)
 (iii) その効果が出願時の技術水準から当業者が予測できたものでないこと。
 なお、有利な効果が顕著性を有しているといえるためには、数値範囲内の全ての部分で顕著性があるといえなければならない。
 また、請求項に係る発明と主引用発明との相違が数値限定の有無のみで、課題が共通する場合は、いわゆる数値限定の臨界的意義として、有利な効果の顕著性が認められるためには、その数値限定の内と外のそれぞれの効果について、量的に顕著な差異がなければならない。
 他方、両者の相違が数値限定の有無のみで、課題が異なり、有利な効果が異質である場合には、数値限定に臨界的意義があることは求められない。

 数値限定発明とは、主引用文献(本願発明に最近似の先行技術文献)との相違点が数値限定のみである発明を言います。

 例えば、引用発明が「A+Bを含む、組成物X」とすると、「A+Bを含み、Aの含有量が○%~△%である、組成物X」で示されるような発明が、数値限定発明です。

 上記したように、数値限定発明は、原則として、数値範囲を最適化又は好適化することは、通常、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから、進歩性が無いものとして拒絶理由の対象となります。

 しかしながら、数値限定発明については、当業者でも予測困難な有利な効果を主張することで、例外的に進歩性が認められることがあります。

 これは、その数値限定の範囲内において従来知られていなかったような有利な効果(顕著な効果)が見られ、かつ予測困難性がある場合に限り、例外的に進歩性を認めて数値限定発明として成立させることが、発明の奨励して産業の発達に寄与するという法目的に沿うためです。

有利な効果

 特許の進歩性の主張では、典型的には、その特許発明の凄さを示すことが好ましいです。

 特許発明の凄さは、その特許発明(以下、本願発明)の効果と、本願発明に最近似の先行技術文献に開示された引用発明の効果とを対比し、その効果の差異で示すのが一般的です。

 すなわち、本願発明の効果が引用発明の効果よりも優れている場合(有利な効果)には、進歩性でこれを主張することができます。

 この有利な効果とは、同質な効果・異質な効果の総称です。

※同質な効果・異質な効果の詳細については、下記の記事で詳細に説明していますので、参照してみて下さい。
・「
特許の進歩性で効果が同質とか異質って何?!超簡単に分かります!

同質な効果(同質だが際立って優れた効果)の判断基準

 「同質」とは、本願発明の効果が、先行技術文献(主引用文献等)に開示された引用発明の効果として開示され、その効果の種類が実質的に同一であることを意味しています。

 したがって、「同質だが際立って優れた効果」とは、その種類が実質的に同一な果ではあるが、その中でもより優れた効果である、ということを意味しています。

 「同質」という点で本願発明の効果(課題)の種類自体は先行技術文献に開示されていますから、より顕著であること、すなわち「際立って優れ」ていることを示す必要があるんですね

 また、「同質だが際立って優れた効果」を示す請求項の構成要件には、ある特定の数値範囲で「際立って優れた」効果を示し、かつその数値範囲外で当該効果を奏さない、というような臨界性が要求されます。

異質な効果の判断基準

 「異質」とは、当該本願発明の効果が、先行技術文献に開示された引用発明の効果として開示されていないことを意味しています。

 ある特定の数値範囲で、従来知られていない「異質な効果」を奏すること、すなわち、新たな課題・技術的思想を示すことは、発明の進歩性の主張にかなり有利に働きます。

 新たな課題・技術的思想を示すものであるため、この「異質な効果」では、上記した「同質だが際立って優れた効果」と比較して、臨界性が求められません

 典型的には、「同質だが際立って優れた効果」と、「異質な効果」では、後者のほうが進歩性が認められ易い傾向があります。

※同質な効果・異質な効果の詳細については、下記の記事で詳細に説明していますので、参照してみて下さい。
・「
特許の進歩性で効果が同質とか異質って何?!超簡単に分かります!

同質な効果・異質な効果の予測困難性の判断基準

 有利な効果の予測困難性の判断基準については、知財高裁(平成28年3月30日)「気道流路および肺疾患の処置のためのモメタゾンフロエートの使用事件」の判例に示されています。

 具体的には、下記のとおりです。

当業者が予測できない顕著な効果といえるためには、従来の公知技術や周知技術に基づいて相違点に係る構成を想到した場合に、本件発明の有する効果が、予測される効果よりも格別優れたものであるか、あるいは、予測することが困難な新規な効果である必要がある。
 ここで、当業者が想到する構成とは、相違点に係る構成を含めた、本発明の構成である。当業者が本発明の構成に想到した場合に、本発明の効果も予測できるか、について検討を行うのである。

 同質な効果については、「同質」という点で本願発明の効果(課題)の種類自体は先行技術文献に開示されています。

 このような同質な効果について予測困難性を主張する方法は種々あるのですが、その中でも、その同質な効果が線形的に変動しないこと、すなわち、非線形的に変動することを示すのが好ましい(臨界性)です(もちろん、非線形的に変動することが公知で無いという前提ありです)。

 例えば、下記の図1に示すように、当業者が、数値と効果の関係において、①の線形線を想定していたと仮定します。

 この場合において、数値範囲内及び数値範囲外において②の非線形線を示すことができれば、予測困難性を示し易いです。

【図1】

0622-8_Fig1_NumericalCriticality

 これに対して、異質な効果は、新たな課題・技術的思想を示すものであるため、そもそも当業者がその効果を予測することが困難であることが前提にあります。

 したがって、異質な効果では、予測困難性を示すことは比較的容易です。

 その他、特許の進歩性の検討については、下記の記事も参照してみて下さい。

・「『進歩性』の拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1

・「材料と製法が本発明のものと同じだったら進歩性が無い?対処法を大公開!

・「進歩性の特許拒絶理由?!指摘は2パターンを知れば十分!

・「進歩性の特許拒絶理由?!超簡単な対処法3パターン!

・「特許の進歩性の課題の共通性って何?!超簡単に分かります!

・「特許の進歩性で効果が同質とか異質って何?!超簡単に分かります!

 今回はここまでです。

よろしければ!

(1)書いてほしい記事はありますか?

 本記事を参照いただき、ありがとうございました。

  特許等に関して、書いてほしい記事等があれば、遠慮なくメールや下記のコメント入力フォームからご相談下さい。

  時間はかかるかもしれませんが、記事の作成を検討させていただきます。

(2)ご質問・ご相談・ご依頼

 また、特許出願、拒絶理由通知の悩み・ご質問などがあれば、メールや下記のコメント入力フォームからご相談下さい。答えられる範囲でお答えします。

ただし、新規の技術内容等に関するものであって、出願を検討しているものについては、絶対に「コメント入力フォーム」に記入しないで下さい。発明の新規性を喪失してしまうことを防止するためです。

 なお、私の状況により、お返事が遅くなることもありますので、その点ご了承下さい。

ArticleNo. 0622-8

この投稿へのコメント

コメントはありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL