他人の特許権が邪魔?特許異議申立のメリット・デメリットを教えます!

他人の特許権が邪魔?特許異議申立のメリット・デメリットを教えます!

ArticleNo. 1100-1

 本サイトは、これを見た方が特許出願書類の作成等を実務レベルかつ独力で行えることを目的としています。

 本サイトの管理人は弁理士として仕事をしており、システムエンジニア・中小特許事務所・大手特許事務所・大企業知財部を経験してきました。この経験が、みなさまのお役に立てれば光栄です。

 今回は、特許異議申立のメリット・デメリットについて説明します。


この記事を参照して得られる効果

 

①.特許異議申立のメリット・デメリットが分かります。
②.特許異議申立を行うことの是非を判断できるようになります。

 

特許異議申立ってなに?

()概要

 特許異議申立制度とは、簡単に言うと、成立した(設定登録された)特許権について、「特許要件を充足していないよ!」と異議の申立を行う制度です。

()趣旨

 特許異議申立制度の趣旨は、「特許庁自ら特許処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図ることにより、特許に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成すること」です。

 これについて、以下説明します。

 特許権は、特許出願後に特許庁の審査を経て(特48条の3)、この特許出願に拒絶理由(特49条各号)が無いことが確かめられてから成立します(特51条)

 特許権の有効性(成立)の判断は原則として特許庁審査官が行いますが、この判断が絶対的なものとは言い切れません。

 そこで、第三者の知見を活用して特許権の有効性の判断をより正確に行えるようにする(特許に対する信頼を高める)ため、特許付与後の一定期間内(特許掲載公報の発行の日から6ヶ月以内)に特許付与の見直しを求める特許異議申立制度が制定されました。

 この特許異議申立制度により、第三者としては対世効を有する特許権の有効性に意見する機会が確保され、かつ、特許権者としてはより信頼性の高い権利の確保が可能となりました。

 余談ですが、第三者が特許権の有効性に意見する機会として、特許付与前における情報提供制度(特許法施行規則第13条の2)も存在しています。

※なお、対世効(たいせいこう)とは、当事者のみならず第三者にも影響を及ぼすことを意味しています。

()特許異議申立のフロー

 下記に、発明推進協会より発行されている工業所有権逐条解説中の特許異議申立のフローを示しています。

【図1】

1100-1_Fig1_ FormalObjectionFlow

特許異議申立のメリット・デメリット

 次に特許異議申立のメリット・デメリットについて解説します。

 これらを勘案することで、実際に特許異議申立を行うことの是非を判断できるようになります。

()特許異議申立のメリット

 異議申立人が特許異議申立を行う理由としては、対象とする特許権が事業展開上で邪魔であるから、というのが一般的です。

 具体的には、事業展開するうえで、異議申立人の自身の製品やその製法又は開発途上品が特許権者の特許権に係る特許発明の技術的範囲に属する場合に、特許権侵害で訴えられる危険性があるため、特許異議申立を行います。

 してみると、特許異議申立のメリットとしては、下記の①~③等を挙げることができます。

①.対象とする特許権を取り消すことができる。
②.対象とする特許権に係る特許発明の技術的範囲を訂正させることができる。
③.ダミーによる申立

 

①.対象とする特許権を取り消す

 特許異議申立のメリットの一つとしては、対象とする特許権を取り消すことが挙げられます。

 これにより、異議申立人が自身の製品やその製法を実施した場合に、特許権者の特許権に基づく訴えを回避することができます。

②.対象とする特許権に係る特許発明の技術的範囲を訂正させる

 特許異議申立のメリットの一つとしては、対象とする特許権に係る特許発明の技術的範囲を特許権者に訂正させることが挙げられます。

 特許異議申立では、特許権者は、特許権の権利範囲の「訂正」(特134条の2)の手続を行うことができます。

 訂正の手続は、特許権者が、異議内容が妥当であると判断した場合に行う手続であって、特許発明の技術的範囲をより明確化し、ブラッシュアップする手続です。

 訂正の手続では、下記の①~④の処理が可能であり、異議内容に応じてこれらの処理を行います。

()特許請求の範囲の減縮
(
)誤記又は誤訳の訂正
(
)明瞭でない記載の釈明
(
)他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。

 異議申立人としては、自身の製品やその製造方法又はその設計変更の範囲で、対象とする特許権に係る特許発明の技術的範囲から外れるように、特許権者に訂正させることを狙います。

 これにより、特許権の取り消しができなかった場合でも、特許権者の特許権に基づく訴えを回避することができます。

③.ダミーによる申立

 特許異議申立では、申立人の要件が「何人も」とあることから、ダミー(第三者)による異議の申立が可能です。

 なんのことかというと、申立を所望する人(便宜上、ダミー依頼人とします)とは別の第三者(便宜上、ダミー本人(異議申立人)とします)に申立を依頼することで、申立所望人の素性を隠すことができるのです。

 例えば、部品供給会社と、当該部品を使用するメーカーとがあると仮定します。

 また、部品供給会社にとってメーカーの特許権が事業展開上で邪魔であるが、ビジネス上の関係は壊したくないとしましょう。

 例えば、メーカーが、部品供給会社の部品をクレームした特許権を保有している場合などが想定されます。

 このような場合に、上記のダミーによる特許異議申立は有効です。

 なお、特許異議申立のダミーの依頼ですが、一般的には、代理人(弁理士)に行います

 さらに、ダミー依頼人と代理人の間の関係が、特許権者に知られないように、代理人がさらに別の第三者(ダミー本人)に依頼をかけます。

 すなわち、ダミーの依頼では、典型的には、()ダミー依頼人、(ii)代理人、(iii)ダミー本人の三者が登場します。

【図2】

1100-1_Fig2_DummyRequest

()特許異議申立のデメリット

 次に、特許異議申立のデメリットについてお話しします。

 特許異議申立のデメリットとしては、下記の①~⑧等を挙げることができます。

 なお、下記では、申立を所望する人を便宜上、ダミー依頼人とし、ダミー依頼された第三者をダミー本人(異議申立人)とします。

①.特許異議申立の費用
②.ダミー依頼人が特許庁からの文書を迅速に参照できない
③.ダミー依頼人が特許庁と直接的にやりとりできない
④.ダミー本人がダミー依頼人の今後の仕事を受任できない
⑤.ダミー本人の所在が開示される
⑥.ダミー本人が弁理士でない場合には、報酬(謝礼)をもらえない
⑦.ダミー依頼人名義の実験成績証明書の提出ができない
⑧.特許異議申立の被申立人(特許権者)による権利維持への注力

 

①.特許異議申立の費用

 特許異議申立の費用は、特許庁印紙代だけで計算すると、16,500円+(請求項の数×2,400)です。

 しかしながら、代理人やダミー(第三者)への依頼を含めると、だいたい50万前後かかります。

 企業ならともかく、個人にとってはかなり大きな負担ですね。

 そのため、費用対効果を考慮して異議申立を行うか否か判断する必要があります。

②.ダミー依頼人が特許庁からの文書を迅速に参照できない

 ダミー依頼人は、特許庁から通知された文書をダミー本人を介して受け取りますから、その文書を迅速に参照することができません。

 したがって、判断の期間が短縮されます。

③.ダミー依頼人が特許庁と直接的にやりとりできない

 特許異議申立においては、特許庁から特許異議申立人(ダミー本人)に対して質疑等連絡がくることがあります

 質疑の内容は、申立書の不備や技術的説明等についてです。

 ダミーを採用した場合には、ダミー依頼人でしか判断できないような内容についても、ダミー依頼人が特許庁と直接的にやりとりできないことから、特許庁とのスムーズな対応を期待することが困難な可能性があります。

④.ダミー本人がダミー依頼人の今後の仕事を受任できない

 ダミー本人(異議申立人)が代理人(弁理士)の場合には、ダミー依頼人の今後の仕事を受任できないというデメリットが想定されます。

 どういうことかと申しますと、上記したように、ダミー本人は、ダミー依頼人と関係あると気づかれてはなりません

 そのため、ダミー依頼人は、ダミー本人に今後の仕事を依頼しない可能性があります。

⑤.ダミー本人の所在が開示される

 ダミー本人(特許異議申立人)は、異議申立にあたって、自身の所在、すなわち住所等を開示する必要があります。

 そのため、ダミー本人が、代理人資格等を持たない個人である場合には、注意が必要です。

⑥.ダミー本人が弁理士でない場合には、報酬(謝礼)をもらえない

 標題のとおりですが、ダミー本人が弁理士資格を有さない場合には、ダミー依頼を受けても報酬(謝礼)がもらえません

 異議申立等の代理業務は、弁理士の独占業務に該当するためです。

⑦.ダミー依頼人名義の実験成績証明書の提出ができない

 化学等の分野では、特許異議申し立てにおいて、異議対象の特許権が特許要件を充足していないことを示す目的で、実験成績証明書を提出することがあります。

 しかしながら、この実験成績証明書には実験者の所在等を記載する必要があり、このままでは、ダミー依頼人の所在等が明らかになってしまいます。

 そのための対策としては、実験成績証明の作成を外部に依頼する案が考えられますが、特許異議申立の費用の増加や、外部に実験設備が整っているか等、種々の考慮が必要となります。

⑧.特許異議申立の被申立人(特許権者)による権利維持への注力

 特許異議申立を行うということは、その被申立人(特許権者)に、特許権の維持について注力させてしまうというデメリットがあります。

 これは、特許異議申立を受けるということは、その特許権が他社の牽制(市場への参入障壁)として効果を出していることの証左となるためです。

 一般的に、特許権の価値評価は非常に難しいです。

 何故なら、その特許権の範囲では、基本的に他社は特許発明の実施をしないため、特許権の権利行使をする機会というのは非常に少なく、特許権が効いているかの是非は、特許権者にとっては非常に分かり難いものだからです。

 この点、上記のように特許異議申立や情報提供、無効審判の請求等、他社から自社の特許権へのアクションを感知するということは、その特許権に価値があることを意味し、特許権者にとっては大切な資産であると認識する根拠となります。

 今回はここまでです。

よろしければ!

()書いてほしい記事はありますか?

 本記事を参照いただき、ありがとうございました。

 特許等に関して、書いてほしい記事等があれば、遠慮なくメールや下記のコメント入力フォームからご相談下さい。

 時間はかかるかもしれませんが、記事の作成を検討させていただきます。

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