拒絶理由通知を読んでもよく分からん!超簡単な分析方法を大公開

拒絶理由通知を読んでもよく分からん!超簡単な分析方法を大公開

ArticleNo. 0610-3

  本サイトは、これを見た方に特許出願書類の作成等を実務レベルかつ独力で行えるようになることを目的としています。

 本サイトの管理人は弁理士として仕事をしており、システムエンジニア・中小特許事務所・大手特許事務所・大企業知財部を経験し、みなさまのお役に立てれば光栄です。

 今回は、拒絶理由通知の分析方法について説明します。

 拒絶理由通知の説明や、処理する際の問題点等に関しては、別記事「拒絶理由通知?何ですかそれは…特許取得を目指す前の基本知識」の参照をお願い致します。

※なお、本サイトに掲載の記事は、産業財産権法、その他の法律、審査基準、学説、及び判例等に基づいて作成されていますが、読者の理解促進及び簡易なステップでの実務遂行を目的として、詳細(枝葉)を省略していることがあります。その点をご承知おきください。

この記事を参照して得られる効果

 

①.拒絶理由の正確な読み方を理解し、さらにそれを使用できるようになります。
②.拒絶理由の処理速度が向上し、また、誤った判断を回避することが出来るようになります。
③.今まで思いつかなかった拒絶理由の克服方法を理解し、さらにそれを使用出来るようになります。

 

拒絶理由通知の分析に関するチェック項目

 さて、いきなりですが、拒絶理由通知の分析方法を公開します。個別の拒絶理由(例えば、拒絶理由通知に記載の「理由1」や「理由2」の各部分)に関するチェック項目(フローチャート付)を下記に示します。このチェック項目にしたがって分類し、分類したケース毎に課題を解決していくイメージを持ってくださればと思います。

個別の拒絶理由に関するチェック項目
(1)特許庁審査官(以下、「審査官」)による拒絶理由の認定は妥当か
(2)拒絶理由が通知されていない請求項があるか
(3)拒絶理由が通知されている請求項だが、審査官からの示唆(解決策の提案)はあるか
(4)上記(1)~(3)のいずれにも該当しない場合、又はこれらのいずれかに該当しても所望する権利範囲外となる場合には、個別に解決策を練ることが可能か

【図1】個別の拒絶理由に関するフローチャート0610-3_図1_OAResFlowChart

(1).審査官による拒絶理由の認定は妥当か

 まず、「(1)特許庁審査官(以下、「審査官」)による拒絶理由の認定は妥当か」についてチェックする理由は、下記の①又は②の対応により、拒絶理由を克服できる可能性が高いためである:

 ①.補正無しで認定不当であることを説明する。

 ②.認定の根拠となった箇所の語句の意味を「より明確」にする補正を行ったうえで、認定不当であることを説明する。

※注意

 初めて拒絶理由通知を見ると、自分が作成した発明及び特許出願の内容を否定された気分になるかと思います。このような気分になると、正常な判断ができなくなる可能性がありますので注意が必要です。

 ここで重要なことは、「審査官は、現行の請求項の記載に基づいて拒絶理由を通知する」ということを認識することです。これは当然のことと思われがちですが、案外難しいことです。それは、「私たちが思い描く発明」と、「現行の請求項に記載の発明」との間に齟齬があり、「現行の請求項に記載の発明」が、「私たちが思い描く発明」を表現できていない可能性があるということに気付くのが困難であるためです。

 したがって、審査官から指摘を受けた場合には、指摘を受けた請求項の文言を確認してみましょう。そして、その表現が妥当か(日本語の「てにをは」の表現や、適切な用語が使用されているか等)を精査し、表現の妥当性に疑義が生じた場合には本願明細書等に基づいて補正できるか検討する、という手順をとるのがよいかと思います。

 精神論となりますが、審査官は、私たちが行った特許出願に対して特許を付与することを阻止しようとしているのでなく、むしろ、特許出願書類の不備を見出し、この不備を取り除いた強い特許を付与する手助けをしてくれているものと考えましょう。

(2).拒絶理由が通知されていない請求項があるか

 「(2)拒絶理由が通知されていない請求項があるか」についてチェックする理由は、当該請求項に減縮補正すれば拒絶理由を克服することが可能であることを示しているためです。具体的な例を下記に示します。

拒絶理由が通知されていない請求項があるかの具体例1

 拒絶理由通知

 特許出願の番号      特願●●●●-●●●●●●
 起案日          平成●●年●●月●●日
 ・・・(中略)・・・
[1]●理由1(新規性)、2(進歩性)について
請求項  :1~4、7~9
・引用文献等:1
・備考
 引用文献等1の・・・(中略)・・・
[2]●理由2(進歩性)について
請求項  :1~5、7~9
・引用文献等:2
・備考
 引用文献等2の・・・(中略)・・・

 前提条件として、上記の拒絶理由が通知されている発明(以下「本願発明」)は、請求項1~9まであるとします。

 上記の[1]では、請求項1~4及び7~9に新規性及び進歩性の拒絶理由が通知されている一方で、請求項5及び6に拒絶理由が通知されていませんよね?

 また、上記の[2]では、請求項1~5及び7~9に新規性及び進歩性の拒絶理由が通知されている一方で、請求項6に拒絶理由が通知されていません

 これらの事実から、[1]及び[2]で拒絶理由が通知されていない請求項6に減縮補正した場合(例えば、請求項6に記載の内容を、請求項1に含ませる場合)には、これらの拒絶理由を克服可能であり、本願発明が高確率で特許査定されます。

 極論しますと、長々とした拒絶理由通知の内容を読まなくても、上記の判断手法に従えば、一瞬で特許査定の可能性を判断することが可能なんですね。 

※「高確率で特許査定」の意味ですが、拒絶理由通知は必ずしも1回で終わるものでなく、さらなる拒絶理由が通知される可能性があることを意味しています。これは、ある拒絶理由通知に応答した後も、さらなる拒絶理由がないか、審査官が審査を継続しているためです。

※「拒絶理由通知の内容を読まなくても」とは言いましたが、上記の場合でも拒絶理由の内容を読解することが推奨されます。これは、下記で説明する「(3)審査官による拒絶理由の認定は妥当か」にも示すとおり、拒絶理由の認定自体が誤っており、補正(権利の縮小)自体が必要ないことがあるためです。

 なお、上記では、「拒絶理由が通知されていない請求項」の拒絶理由の例として「新規性」や「進歩性」を示しましたが、この考え方は、「実施可能要件」、「サポート要件」、及び「明確性要件」等の拒絶理由でも有効です。 

拒絶理由が通知されていない請求項があるかの具体例2

 「拒絶理由が通知されていない請求項がある」もう一つ具体的な事例を下記に示します。

拒絶理由通知

 特許出願の番号      特願●●●●-●●●●●●
 起案日          平成●●年●●月●●日
 ・・・(中略)・・・
[3]●理由1(新規性)、2(進歩性)について
請求項  :1~4、6~9
・引用文献等:1
・備考
 引用文献等1の・・・(中略)・・・
[4]●理由2(進歩性)について
請求項  :1~5、7~9
・引用文献等:2
・備考
 引用文献等2の・・・(中略)・・・

 前提条件として、上記の拒絶理由が通知されている発明(以下「本願発明」)は、請求項1~9まであるとします。

 上記の[3]では、請求項1~4及び6~9に新規性及び進歩性の拒絶理由が通知されている一方で、請求項5に拒絶理由が通知されていません。 

 また、上記の[4]では、請求項1~5及び7~9に新規性及び進歩性の拒絶理由が通知されている一方で、請求項6に拒絶理由が通知されていません

 これらの事実から、[1]及び[2]で拒絶理由が通知されていない請求項5及び6に減縮補正した場合(例えば、請求項5及び6に記載の内容を、請求項1に含ませる場合)には、これらの拒絶理由を克服可能であり、本願発明が高確率で特許査定されます。

(3).拒絶理由が通知されている請求項だが、審査官からの示唆(解決策の提案)はあるか

 「(3)拒絶理由が通知されている請求項だが、審査官からの示唆(解決策の提案)はあるか」についてチェックする理由は、当該「示唆」にしたがって補正すれば拒絶理由を克服することが可能であることを示しているためです。具体的な例を下記に示します。

拒絶理由が通知されている請求項だが、審査官からの示唆(解決策の提案)はあるかの具体例1

拒絶理由通知

 特許出願の番号      特願2013-239924
 起案日          平成27年10月20日
 審査官       壷内 信吾        3773 4G00
 特許出願人代理人     岸本 達人(外 2名) 様
 ・・・(中略)・・・
●理由(サポート要件)について
・請求項 1
 請求項1には、「ただし、上記一般式(1)及び(2)中、M及びMは、互いに独立して、Fe又はRuであり、…」と記載され、MとMが、共にFeであっても良いと解される。
 一方、請求項1の一般式(1)及び(2)に規定される触媒のうち、本願発明の詳細な説明において、その活性が具体的に確認できるのは、MとMが、共にRuであるもの、及び、MとMがRuとFe組み合わせであるもののみだけである(実施例参照)[5]。
 触媒の技術分野においては、触媒で使用する元素とその触媒活性とには予測性がないことが広く知られていることが、出願時の技術常識であることを鑑みると、一般式(1)又は(2)において、MとMが、共にRuであるもの又はRuとFe組み合わせであるもの以外の元素の組合せ[6]、すなわち、共にFeであるものが、[0008]に掲げる、「高効率の水素酸化触媒反応が実現できる」か不明であり、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
 よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
・・・(中略)・・・
※なお、当該拒絶理由通知の担当事務所は、東京セントラル特許事務所で、出願人は、東京大学及びトヨタ自動車です。

 上記「●理由(サポート要件)について」では、審査官が長々とサポート要件違反の理由を指摘しています。

 一見すると、本願明細書を参照して技術を理解しないと、解決策が見えないように思うのですが、審査官は上記の[5]及び[6]で解決策を示唆しています。

 具体的には、審査官は[5]で、「その活性が具体的に確認できるのは、MとMが、共にRuであるもの、及び、MとMがRuとFe組み合わせであるもののみだけである」と指摘し、「確認できるのは~である」と認定の表現を行って、暗に、これに補正すれば、拒絶理由を克服して、本願発明が高確率で特許査定されることを示唆しているんですね。そして、審査官は[6]で、上記の組み合わせの「もの以外の元素の組合せ」では「高効率の水素酸化触媒反応が実現できる」か不明と指摘し、上記の示唆をさらに強調しています。

 なお、このサポート要件違反では、何らかの物質に関する拒絶理由としか分かりません(技術の詳細はここから分からない)。明細書の記載を参照して技術内容を理解するのは当然なのですが、特許の実務者であれば、この明細書の記載を読まずとも「審査官からの示唆」を把握するだけで、拒絶理由の克服方法を瞬時に見出すことができるんですね(もちろん、これを読まなきゃいけないんですけどね)。 

 参考までに、具体的な補正の内容を、下記に示しています(本願発明は、下記補正(下線部)によって、実際に特許査定されました)。

【請求項1】
 下記一般式(1)又は(2)により表される化学構造を有する二核遷移金属錯体であることを特徴とする、水素酸化触媒。
【化1】
0610-3_化1

(ただし、上記一般式(1)及び(2)中、M及びMは、互いに独立して、Fe又はRuであり及びMの両方がRu
であるか、MがFeでありMがRuであるか、又は、MがRuでありMがFeであるかのいずれかであり、かつ、Ar及びArは、互いに独立して、シクロペンタジエニル基又はペンタメチルシクロペンタジエニル基であり、かつ、Ar及びArは、互いに独立して、炭素数6~12の二価の芳香族炭化水素基であり、かつ、Arは、炭素数6~12の一価の芳香族炭化水素基である。また、上記一般式(2)中、R及びRは、互いに独立して、水素原子、又は炭素数1~3の一価の脂肪族炭化水素基である。)

 なお、上記では、「拒絶理由が通知されている請求項だが、審査官からの示唆(解決策の提案)はあるか」の拒絶理由通知の例として「サポート要件違反」を示しましたが、この考え方は、「新規性」や「進歩性」、「実施可能要件」、及び「明確性要件」等の拒絶理由でも有効です。

拒絶理由が通知されている請求項だが、審査官からの示唆(解決策の提案)はあるかの具体例1

 「拒絶理由が通知されている請求項だが、審査官からの示唆(解決策の提案)がある」もう一つ具体的な事例を下記に示します。

拒絶理由通知

 特許出願の番号      特願2013-179580
 起案日          平成27年11月27日
 審査官       久保 道弘        4514 4J00
 特許出願人代理人     松井 光夫 様
・・・(中略)・・・
●理由1(サポート要件)について
・請求項:1~8
 請求項1は、(A)~(F)を含有する組成物が規定されている。
 本願発明は、請求項1に係る特定の成分を特定量配合することにより得られる組成物が本願発明の課題「高温下に長期間置いても熱分解(重量減少)が少なく、またCuLFやAgメッキとの密着性に優れ、かつ高温下で良好な機械的強度を有する、信頼性に優れた硬化物を与える樹脂組成物を提供する」(段落0010)ことを解決するものであり、さらに段落0011に記載されるように「シアネートエステル化合物」および「フェノール化合物」から硬化物を得るものと認められる([7])。
 しかし、(A)成分および(B)成分を含む組成物は、例えばエポキシ樹脂等カチオン重合性化合物の硬化剤であることは当業者に自明であり(要すれば、引用文献1、2の各特許請求の範囲、実施例を参照)、本願請求項1に係る組成物はエポキシ樹脂等への配合を除外するものではない([8])。
 そうしてみれば、本願発明は、エポキシ樹脂等を硬化するための組成物であるという態様も包含するものであり、この態様は上記課題を超えた範囲を含むものである([9])
 したがって、本願請求項1に係る発明は、本願発明の課題を解決し得ない範囲まで包含するものであると認められる。請求項2~8についても同様である。
・・・(中略)・・・

 上記のサポート要件に関する拒絶理由では、審査官は、[7]で「『シアネートエステル化合物』および『フェノール化合物』から硬化物を得るものと認められる」、[8]で「本願請求項1に係る組成物はエポキシ樹脂等への配合を除外するものではない」、[9]で「本願発明は、エポキシ樹脂等を硬化するための組成物であるという態様も包含するものであり、この態様は上記課題を超えた範囲を含むものである」と認定し、暗に、「エポキシ樹脂等を硬化するための組成物であるという態様」を除外する補正を行えば、拒絶理由を克服して、本願発明が高確率で特許査定されることを示唆しているんですね。 

 参考までに、具体的な補正の内容を、下記に示しています(本願発明は、下記補正(下線部)によって、実際に特許査定されました)。

【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル化合物、
(B)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物
(C)無機充填剤
(D)下記一般式(3)で表される化合物
  R(RO)(3-d)Si-CーSH  (3)
(式(3)中、R及びRは互いに独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、dは0~2の整数である)
(E)モリブデン酸金属塩を無機担体に担持してなる物資、及び
(F)ハイドロタルサイト様化合物及び/またはハイドロタルサイト様化合物の焼成物を含み、(A)シアネートエステル化合物中のシアナト基に対する(B)フェノール化合物中のフェノール性水酸基のモル比が0.1~0.4である
組成物(但し、エポキシ樹脂を含まない)

(4).上記(1)~(3)のいずれにも該当しない場合、又はこれらのいずれかに該当しても所望する権利範囲外となる場合には、個別に解決策を練ることが可能か

 「(4)上記(1)~(3)のいずれにも該当しない場合、又はこれらのいずれかに該当しても所望する権利範囲外となる場合には、個別に解決策を練ることが可能か」についてチェックする理由は、読んで字の如くでありますが、「上記(1)~(3)のいずれにも該当しない場合」には、当然に個別に解決を図る必要があるのと、「上記(1)~(3)のいずれかに該当しても所望する権利範囲外となる場合」には、所望する権利範囲をとれるように個別に解決を図る必要があるためです。

 なお、「個別の解決策」としては、「新規性」、「進歩性」、「実施可能要件」等の拒絶理由を個別に解決する方法を別記事で示していますので、そちらを参照いただければと思います。

  今回はここまでです。

よろしければ!

(1)書いてほしい記事はありますか?

 本記事を参照いただき、ありがとうございました。

 特許等に関して、書いてほしい記事等があれば、遠慮なくメールや下記のコメント入力フォームからご相談下さい。

 時間はかかるかもしれませんが、記事の作成を検討させていただきます。

(2)ご質問・ご相談・ご依頼

 また、特許出願、拒絶理由通知の悩み・ご質問などがあれば、メールや下記のコメント入力フォームからご相談下さい。答えられる範囲でお答えします。

※ただし、新規の技術内容等に関するものであって、出願を検討しているものについては、絶対に「コメント入力フォーム」に記入しないで下さい!発明の新規性を喪失してしまうことを防止するためです。

 その他、本格的な相談(依頼)等につきましては、単発ですが、格安で案件を請け負うことも考えておりますので、メールでご相談下さい。

 なお、私の状況により、お返事が遅くなることもありますので、その点ご了承下さい。

ArticleNo. 0610-3

この投稿へのコメント

コメントはありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL