特許って具体的になんなの?知財業界初心者が戸惑う出願書類の詳細

特許って具体的になんなの?知財業界初心者が戸惑う出願書類の詳細

ArticleNo. 0210-2

 本サイトは、これを見た方に特許出願書類の作成等を実務レベルかつ独力で行えるようになることを目的としていますが、前提として、特許がなんたるかを知らないこともあるかと思うので、ここでは、「特許」ってなんですか?ということと、その周辺の法律のことを簡単に書きます。

 本サイトの管理人は弁理士として仕事をしており、システムエンジニア・中小特許事務所・大手特許事務所・大企業知財部を経験し、みなさまのお役に立てれば光栄です。

※なお、本サイトに掲載の記事は、産業財産権法、その他の法律、審査基準、学説、及び判例等に基づいて作成されていますが、読者の理解促進及び簡易なステップでの実務遂行を目的として、詳細(枝葉)を省略していることがあります。その点をご承知おきください。

この記事を参照して得られる効果

 

①.知的財産の概要を理解できます。
②.必要な特許出願書類の概要を理解できます。

 

1.知的財産

 特許は、特許法という法律によって定義されていて、さらに特許法は、産業財産権法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)の一部です。

 産業財産権法は、人の知的活動によって生み出されたアイデア、ブランド、及びデザイン等を保護するための法律であり、アイデア、ブランド、及びデザイン等はひとまとまりで「知的財産」と呼ばれています。

 知的財産を保護する法律は、種々存在し、例えば、下記の図に記載のものが挙げられます。

◇知的財産を保護する法律
1.特許法
2.実用新案法
3.意匠法
4.商標法
5.著作権法
6.不正競争防止法
7.パリ条約
8.特許協力条約
9.特許法条約
10.マドリッド協定及びその議定書 etc...

 

2.特許法

 特許を保護する特許法は、具体的には、人の知的活動によって生み出されたアイデアを保護する法律であり、発明の公開によって、産業の発展に寄与しつつ、この公開の対価として、出願人に独占排他的な権利である特許権を付与することを目的としています。

 特許権は、一個人が持ち得る法律的な権利としては最強の部類に属していまして、これを有していれば、例えば、第三者が特許発明をマネして販売等したとしても、これを止めたり、損害賠償請求などを行えるようになるんですね。

3.特許出願書類ってなに?

 特許権を得るには、特許出願書類を作成して特許庁に提出し、特許庁の審査官に審査してもらう必要があります。

 特許出願書類としては、主に、願書、特許請求の範囲、特許明細書、図面、及び要約書が挙げられます。

(1)願書

 願書は、出願人や発明者の氏名や住所、代理人(弁理士)の識別番号等を記載する書類であって、形式的なものです。下記に願書の例を示しています。

※なお、発明者が出願人(権利者)とは限りません。

【図1】願書例

 0210-2_図1_GanshoImage

(2)特許請求の範囲

 特許請求の範囲は、発明の権利範囲を規定する書類であって、最も重要な書類です。ここの表現如何で権利範囲が変動するので、センスが問われる書類であり、この書類の作成が完了すれば、実は、特許出願書類の作成の50%は終わり、と言っても過言でないです。

 下記は、排ガス浄化触媒を発明とした特許請求の範囲の例ですが、文の終わりが「排ガス浄化触媒」で終わっていることに、最初は違和感を覚えるかと思います(すぐに慣れますが)。

 まず、発明の名称である固有名詞があって、その固有名詞を修飾する文、すなわち説明する文を付加してゆくことで、発明に特徴を持たせるんですね。

 特許請求の範囲の記載方法については、別途、詳細に説明しますので、ここでは紹介までです。

【書類名】   特許請求の範囲
【請求項1】
 基材と、前記基材に担持されている金属粒子A及び金属粒子Bとを含み、
 前記金属粒子Aの含有量が、前記金属粒子A及び金属粒子Bの総質量に基づいて、10質量%以上30質量%以下である、
排ガス浄化触媒。
【請求項2】
 前記金属粒子Aの粒径が、50nm以上500nm以下である、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
 前記金属粒子Aが、前記金属粒子Bに担持されている、請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
 金属粒子Cを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。

(3)特許明細書

 特許明細書は、簡単に言うと、上記した特許請求の範囲の説明書です。

 特許請求の範囲に記載した発明の特徴や構成とかを説明して、この発明がどのような効果を発揮するのかを説明するための書類なんですね。下記に特許明細書の例を示しています。

 特許明細書の記載方法については、別途、詳細に説明しますので、ここでは紹介までです。

【書類名】   明細書
【発明の名称】 例:排ガス浄化触媒
⇒この項目では、請求項に記載された発明の名称を記載します。
【技術分野】
⇒この項目では、特許出願に係る発明(以下、「本発明」)が、どの技術分野に属するものであるかを簡単に説明します。
 例:本発明は、排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
⇒この項目では、従来技術の説明を行います。本発明は、典型的には、従来技術で解決できなかった課題を解決するものですが、比較対象(基準)がなければ、その凄さや有効性が分かりませんよね?なので、ここでは、従来技術の説明とその基準を示すものと考えてください。なお、この項目は、明細書の作成で必須ではありませんが、一般的には、この任意選択的な項目の内容も記載するのが多数派です。
 例:自動車等の燃焼機関から排出される排ガスには、窒素酸化物や一酸化炭素等の成分が含有されている。従来、金属粒子Aを基材に担持した排ガス浄化触媒に排ガスを接触させ、これによって、これらの成分を浄化する技術が知られている。…
【先行技術文献】
 【特許文献】例:特開●●●●-●●●●●●号公報
 【非特許文献】例:Rohit Vijay, Christopher M. Snively, Jochen Lauterbach, 2006, Performance of Co-containing NOx storage and reduction catalysts as a function of cycling condition. Journal of Catalysis,Volume 243, Issue 2, 25 October 2006, Pages 368-375.
⇒先行技術文献、特許文献、非特許文献の項目では、読んで字の如く、従来技術の参考文献の提示を行います。この項目も明細書の作成で必須ではありませんが、一般的には、この任意選択的な項目の内容も記載するのが多数派です(任意選択的とされていますが、記載していないことによって、拒絶理由が通知される可能性もありますから、記載しておくのが無難ですね(特許法第36条第4項第2号))。
【発明の概要】
 【発明が解決しようとする課題】
⇒この項目では、従来技術では解決できなかった課題、又は新たに発明者によって見出された課題を記載します。具体的には、ここに記載される課題は、本発明で解決されるものです。
 例:上記した金属粒子Aでは、排ガスの成分、特に、一酸化炭素の浄化効率が十分ではなかった。したがって、本発明は、向上した一酸化炭素浄化能力を示す排ガス浄化触媒を提供することを目的とする。
 【課題を解決するための手段】
⇒この項目では、上記課題を解決する解決手段を記載します。具体的には、請求項のコピペです。
【発明の効果】
⇒この項目では、上記解決手段が奏する効果を記載します。具体的には、【発明が解決しようとする課題】のコピペで十分かと思います。この項目も明細書の作成で必須ではありませんが、一般的には、この任意選択的な項目の内容も記載するのが多数派です。
 例:本発明は、向上した一酸化炭素浄化能力を示す排ガス浄化触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
⇒この項目では、添付した図面の名称を記載します。図面の添付が無い場合には、記載の必要はありません。
 例:【図1】図1は、本発明の排ガス浄化触媒の一実施形態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
⇒この項目では、本発明の説明を行います。具体的には、請求項1をコピペ、次に、その請求項を構成している構成要素の説明、この請求項がどのようにして効果を奏するのかのメカニズム的な説明を行い、同じことを請求項2、請求項3…でも行ってゆきます。添付した図面の説明等も、この項目で行います。この項目も明細書の作成で必須ではありませんが、一般的には、この任意選択的な項目の内容も記載するのが多数派です(請求項の内容を、【課題を解決するための手段】で行う明細書作成者もいます)。
 例:《排ガス浄化触媒》
本発明の排ガス浄化触媒は、基材と、基材に担持されている金属粒子A及び金属粒子Bとを含み、金属粒子Aの含有量が、金属粒子A及び金属粒子Bの総質量に基づいて、10質量%以上30質量%以下である。
 これらが含まれていることにより、~のメカニズムで作用して、向上した一酸化炭素の浄化能力が発揮される。
 〔金属粒子A〕
 金属粒子Aは、…
 〔金属粒子B〕
 金属粒子Bは、…
【実施例】
⇒この項目では、具体的に行った実験例等を記載します。この項目も明細書の作成で必須ではありませんが、化学等の技術分野では、実質的に必須の項目です。この項目において、本願発明のサンプル作成過程及び評価結果を示し、本願発明の効果を実証します。
例:〔実施例1〕
 金属Aを含む化合物α、金属Bを含む化合物β、及び分散剤としての〇〇を、純水に投入し、撹拌しつつ溶解させた。この溶解液に、還元剤としてのNaBHを〇〇g添加して金属粒子A及びBを析出させ、これを基材に担持し、これによって、排ガス浄化触媒のサンプル1を作成した。なお、金属粒子A及びBの担持量は、それぞれ…
【産業上の利用可能性】
⇒この項目では、本発明の用途を記載します。この項目も明細書の作成で必須ではありません。
例:本発明の排ガス浄化触媒は、自動車、船舶、工場の設備等で採用することができる。
【符号の説明】
⇒この項目では、添付した図面に付した番号の説明を行います。図面の添付が無い場合には、記載の必要はありません。

(4)図面

 図面は、発明の構造やメカニズム、プロット図を示すのに用います。図を見ながら、特許明細書を読むと、発明の理解が一層すすみます。

 図面の記載方法については、別途、詳細に説明しますので、ここでは紹介までです。

(5)要約書

 要約書は、発明がどんなものか要約したものです。

 出願書類は、「公開公報」という公報で公開されるんですが、そのときにこの要約書があると、発明の内容がすぐに分かるので便利なんですね。下記に要約書の例を示しています。

【書類名】   要約書
【要約】
【課題】
⇒この項目では、本発明の課題を記載します。明細書の【解決しようとする課題】のコピペでよいかと思います。
 例:本発明は、より向上した排ガス浄化能力を有する排ガス浄化触媒を提供することを目的とする。
【解決手段】
⇒この項目では、解決手段、すなわち、請求項1をコピペします。請求項1は、「修飾表現+物」と記載されるのが一般的ですから、「物+修飾表現」に直してここに記載しましょう。
 例:本発明の排ガス浄化触媒は、基材と、基材に担持されている金属粒子A及び金属粒子Bとを含み、この排ガス浄化触媒では、金属粒子Aの含有量が、金属粒子A及び金属粒子Bの総質量に基づいて、10質量%以上30質量%以下である。
【選択図】例:図1
⇒この項目では、添付した図面のうち、本発明の説明に最も適した図面を選択して、その図面番号を記載します。図面の添付が無い場合には、記載の必要はありません。

  今回は、ここまでです。

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