材料と製法が本発明のものと同じだったら進歩性が無い?対処法を大公開!

材料と製法が本発明のものと同じだったら進歩性が無い?対処法を大公開!

ArticleNo. 0622-2

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 今回は、審査官からの進歩性違反の指摘(新規性で指摘されることもあり)で、引用文献に記載の「材料と製法が本発明のものと同じ」だから、本発明には進歩性(稀に新規性欠如で認定されることあり)が無い、と言われた場合の対処法をお話しします。

※なお、本サイトに掲載の記事は、産業財産権法、その他の法律、審査基準、学説、及び判例等に基づいて作成されていますが、読者の理解促進及び簡易なステップでの実務遂行を目的として、詳細(枝葉)を省略していることがあります。

 その点をご承知おきください。

この記事を参照して得られる効果

①.審査官からの「材料と製法が本発明のものと同じ」との指摘に対応することができる。

拒絶理由における進歩性判断の前の注意

 なお、進歩性を含めた拒絶理由の基礎的な対応方法については、下記の記事も参照してみて下さい。

「拒絶理由通知を読んでもよく分からん!超簡単な分析方法を大公開」

「『新規性』の拒絶理由?!特許取得を目指す前の基本知識その1」

「『新規性』の拒絶理由?!特許取得を目指す前の基本知識その2」

「『新規性』の拒絶理由?!特許取得を目指す前の基本知識その3」

「『進歩性』の拒絶理由?!特許取得を目指す前の基本知識その1

・「進歩性の特許拒絶理由?!指摘は2パターンを知れば十分!」

・「進歩性の特許拒絶理由?!超簡単な対処法3パターン!」

どのような場合に「材料と製法が本発明のものと同じ」という指摘を受けるか

 さて、本題に入ります。「材料と製法が本発明のものと同じ」なる指摘を受ける請求項には特徴があります。

 このような指摘を受ける請求項では、「構造」や「組成」(例えば、「棒状取っ手部」や「アルキレン基を有する有機化合物」等)で規定されておらず、「物性値」や「パラメータ」で規定されていることが多いです。

 また、「物性値」や「パラメータ」は、もともとは「構造」や「組成」からなる物品を測定評価した値であり、引用文献に記載されていないことがあります。

 このような場合に、審査官は、引用文献に記載の「構造」や「組成」、「材料・製法」を参照し、本願明細書の実施形態に記載の発明と同等である可能性が高いと判断した場合に、本願の請求項の「物性値」や「パラメータ」が充足されていると推定してくるんですね。

 この判断手法は、「内在同一」と呼ばれるもので、典型的には、新規性有無の判断で用いられるものですが、審査官によっては進歩性有無の判断で採用されることがあるんですね。

※「物性値」とは
 「物性値」とは、そのモノ(発明)が持つ性質の大小を表す物理量です。例えば、電気抵抗値や抵抗率、ヤング率、粘度、ゼータ電位、弾性率、吸光度等などが該当します。一般的に、当業者(その技術分野に詳しい人)が、慣用的に用いる物理量であることが多いです。
※「パラメータ」とは
 「パラメータ」の解釈は、上記の「物性値」とほぼ同一です。注意が必要なのは、当業者が慣用的に用いない物理量であることに違いがあることです。
 例えば、ある組成物の粘度は、当業者に慣用的ですが、ある組成物の粘度をその吸光度で除した値(粘度/吸光度)が、当業者でも見たことないような物理量である場合には、パラメータとなります。
 パラメータで規定された発明は、その性質上、従来の引用文献に記載されていない可能性が高いですから新規性を確保し易いですが、上記の審査官の指摘(材料・製法同一による進歩性欠如)やサポート要件等の記載不備の可能性が高まります。

対処法

 いよいよ「材料と製法が本発明のものと同じ」と指摘された場合の対処法について示します。

 具体的には、下記に示す順番に検討を進めていきます。

(1)「材料が製法が本発明のものと同じ」かを詳細に分析して違いを示す

(1-1)分析方法

 審査官が、「材料と製法が本発明のものと同じ」と指摘しても、実際には、引用文献において、本願明細書に記載のものと類似の材料及び類似の製法を採用しているだけ、ということがあり得ます。

 他方、例えば化学の分野では、ほんの少しの違いによって、全く異なる組成物が合成される可能性があり、試してみないと分からないことも多いのです。

 すなわち、引用文献と本発明(明細書の実施例等)との対比においては、材料の違い(元素や基、分子量、結晶構造、数量、質量%濃度、割合等)や、製法の違い(材料の供給速度、供給順序、反応時間、反応温度、反応湿度、反応圧力等)を詳細に洗い出し、比較検討してみることが必要です。

 審査官の主張に対しては、これら洗い出した違いの中で、請求項の要件(特徴)に影響する違いを見出し、引用文献に記載のものではこの特徴を満たしていないから、本願の請求項の要件を充足しない、と主張できればしめたものです。

(1-2)追試

 ただし、その違い(特徴)が微差である場合には、審査官の疑義を晴らすことが容易でないこともよくあります。

 典型的には、その違いが存在することによって、引用文献で製造されたものが、①本願の請求項の要件を充足せず、かつ②当該請求項に係る発明の効果をも奏さないことを、追試によって示すのが望ましいです。

(1-3)具体的な追試例の策定

 追試が必要と言っても、追試の方法も種々あるので困るところです。

 例えば、引用文献に記載の製法をそのまま追試しようとする場合、引用文献に記載の材料を集め、製造条件も一致させる必要がありますが、追試するための設備や装置が無かったり、当該材料が入手困難であったり、引用文献には記載されていない細かな操作・条件を想定する…など、問題が山積します。

 私が発明者によく提案する追試の方法は、本願の実施例や実施形態において、製法や指針の違いとなる特徴部分の操作・条件のみを変更した比較実験例を作成し、これを引用文献に相当すると示すことです。

 そして、実際に本願の実施例と比較実験例を比較し、比較実験例では、本願の実施例の構成や効果等を充足しないことを示します

 このようにして、特徴における差異が、本願の請求項の要件を充足させるのにどれほど大切なものかを、審査官に理解してもらうのです。

(1-4)注意点

 なお、審査官への主張では、このような違い(特徴)に関する記載や示唆が、引用文献に無いことも併せて主張することを忘れないで下さい。後々に、審査官から「当業者なら容易な設計事項である」などと指摘される可能性を少しでも減らすためです。

 また、引用文献に記載のものが、請求項の要件(構成)を充足しないことを主張したら、その次に、本発明には有利な効果があることを主張することも忘れないで下さいね。

 進歩性の主張では、請求項の要件が異なることと、有利な効果を奏することを主張するのは、原則としてセットです。

(2)請求項の要件(「物性値」や「パラメータ」等)を充足する指針(所定の材料や製法)を把握する

 典型的には、請求項に係る発明の製法や調製方法が、明細書中に記載されています(換言すると、明細書作成時には、必須で記載することが推奨されます)。

 その製法等の中に、請求項の「物性値」や「パラメータ」等を達成する指針が記載されているか確認しましょう。

 この指針は、上記の「(1)『材料が製法が本発明のものと同じ』かを詳細に分析する」でも述べた、「請求項の要件に影響する違い(特徴)」に相当するものです。

 これが本願明細書中に記載されている場合には、引用文献で製造されるものと、本願で製造されるものとの違いを、よりすばやく把握でき、審査官への主張でも説得力を持たせることができます。

 追試や注意事項については、上記の「(1)」と同様ですので割愛します。

(3)製法・指針等で差異を見出しても引用文献で製造されたものが本願の請求項の要件を充足する場合

 製法・指針等で差異を見出しても引用文献で製造されたものが本願の請求項の要件を充足してしまうことがあるかと思います。

 その場合には、本願の請求項を補正する必要があります。具体的には、引用文献で製造されたものが達成できないような特徴を、本願の請求項に追記する補正を施しましょう。

 後の手順、すなわち、追試や注意事項については、上記の「(1)」と同様ですので割愛します。

今回はここまでです。

よろしければ!

(1)書いてほしい記事はありますか?

 本記事を参照いただき、ありがとうございました。

  特許等に関して、書いてほしい記事等があれば、遠慮なくメールや下記のコメント入力フォームからご相談下さい。

  時間はかかるかもしれませんが、記事の作成を検討させていただきます。

(2)ご質問・ご相談・ご依頼

 また、特許出願、拒絶理由通知の悩み・ご質問などがあれば、メールや下記のコメント入力フォームからご相談下さい。答えられる範囲でお答えします。

ただし、新規の技術内容等に関するものであって、出願を検討しているものについては、絶対に「コメント入力フォーム」に記入しないで下さい。発明の新規性を喪失してしまうことを防止するためです。

 なお、私の状況により、お返事が遅くなることもありますので、その点ご了承下さい。

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