「サポート要件」の拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1

 

「サポート要件」の拒絶理由?!その解説と解消方法を公開その1

ArticleNo. 0624-1

 本サイトは、これを見た方に特許出願書類の作成等を実務レベルかつ独力で行えるようになることを目的としています。

 本サイトの管理人は弁理士として仕事をしており、システムエンジニア・中小特許事務所・大手特許事務所・大企業知財部を経験し、みなさまのお役に立てれば光栄です。

 今回は、拒絶理由の「サポート要件」について説明します。

この記事を参照して得られる効果

①.拒絶理由におけるサポート要件の意味を理解できます。

②.拒絶理由におけるサポート要件違反の処理を自分でできるようになります。

拒絶理由におけるサポート要件判断の前の注意

 本記事は、拒絶理由におけるサポート要件に関するものですが、サポート要件を判断する前にチェックして欲しい事項があります。すなわち、審査官の認定の妥当性や、サポート要件の拒絶理由が指摘されていない請求項が無いか等の事項です。

 これらのチェック結果によっては、そもそもサポート要件の判断を行う必要性がなくなる可能性がありますので、是非とも、下記のチェック項目、及び別記事「拒絶理由通知を読んでもよく分からん!超簡単な分析方法を大公開」を、先に参照することを推奨します。

個別の拒絶理由に関するチェック項目

(1)審査官による拒絶理由の認定は妥当か

(2)拒絶理由が通知されていない請求項があるか

(3)拒絶理由が通知されている請求項だが、審査官からの示唆(解決策の提案)はあるか

(4)上記(1)~(3)のいずれにも該当しない場合、又はこれらのいずれかに該当しても所望する権利範囲外となる場合には、個別に解決策を練ることが可能か

 ここでは、上記の(4)「個別に解決策を練る」を選択したものとします。

1.サポート要件の簡単な説明

 特許出願書類は、願書、特許請求の範囲、明細書、要約書、及び任意の図面からなるところ、法律上の権利範囲の根拠となるのは「特許請求の範囲」です。この「特許請求の範囲」の記載は発明の詳細な説明に記載したものであること、が要求されます(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)

 そして、この要件を充足しない場合には、特許権を付与してもらえず、さらには、特許権を付与されても無効理由を内包することとなります(特許法第49条第4号、第123条第1項第4号)。

2.サポート要件のイメージ

 このサポート要件ですが、百聞は一見にしかずで、イメージで把握するほうが簡単です。下記の図1を参照して下さい。

【図1】

 0624-1_Fig1_SupportRequirement

 図1(1-a)では、発明の詳細な説明(実質的には本願明細書のこと)に特許請求の範囲が含まれているのに対して、(1-b)では、その一部が含まれていません(赤色部分)。

 この図1(1-b)に該当する場合に、サポート要件違反となります。

 なお、サポート要件が要求される理由は、「あなたが請求しようとしている権利は、発明の詳細な説明に開示されている内容を超えていて、公開していない発明について権利取得しようとするものだから、特許法の趣旨に合致しないため、付与しません」というものです。

3.サポート要件をもう少し詳しく

 サポート要件の本質は、特許請求の範囲に記載の発明の「全て」が発明の効果を奏する(示す)ことが、発明の詳細な説明から理解できることと換言することができます。これを、下記に例示して説明します。

(1)上位概念と下位概念という考え方

 サポート要件の理解には、上位概念と下位概念という考え方を理解する必要があります。「上位概念」とは、「下位概念」を包含する概念であり、例えば、「上位概念」が「魚」だとすると、「下位概念」は「マグロ」であったり「サバ」、「アジ」などの具体例を意味しています。

(2)下位概念から上位概念への一般化・拡張

 当たり前ですが、下位概念たる「マグロ」等を知れば、上位概念たる「魚」も理解することができますね。

 ここで、「マグロ」を用いた料理「マグロの照り焼き」を発明し、「頭の回転が早くなる」という効果を見出して、これを特許出願することを考えましょう。

 より広い権利範囲を得ることを考え、「マグロの照り焼き」(下位概念)でなく「魚の照り焼き」(上位概念)で、特許請求の範囲を記載したとしましょう。

※なお、このような操作を、特許業界では「一般化・拡張」等といいます。

(3)サポート要件違反のタネ

 さて、上記の特許請求の範囲がサポート要件違反に該当する可能性に気付きましたでしょうか?

 実は上記で下位概念から上位概念に一般化・拡張したその瞬間に、サポート要件違反が指摘される可能性があるんです。

 具体的には、上記の特許出願では、「魚の照り焼き」(上位概念)が「頭の回転が早くなる」という効果を示す、としていますが、実際の実施形態(実施例)は「マグロの照り焼き」(下位概念)が当該効果を示す、というものであり、例えば、「サメの照り焼き」についても当該効果を示すかは、技術常識等から分かりませんよね?

 このように、実施形態(実施例)よりも、特許請求の範囲を広く記載した場合には、常にサポート要件違反が指摘され可能性があるんです。

4.サポート要件違反に対処する方法

 サポート要件違反との指摘(上記の図1(1-b)に該当するとの指摘)を受けた場合に、これに対処する方法としては、下記の(1)及び(2)のとおりです。

(1)サポート要件違反との指摘が誤っている場合

 サポート要件違反との指摘が誤っている、すなわち、下記の図2(1-b)と指摘されたが、その指摘は間違いであり、本発明は図2(1-a)に該当する、と主張します。

【図2】

0624-1_Fig2_SupportRequirement

(2)サポート要件違反との指摘が妥当である場合

 下記の図2(1ーc)に示すように補正を施し(特許請求の範囲を減縮し)、サポート要件を充足している旨、主張します。

 このとき、拒絶理由通知には審査官の補正の示唆が記載されていることが多いので、それにしたがって補正すると高確率で拒絶理由を回避できます(例えば、「実施例に開示されている化合物αは本発明の効果を奏することが認められるが、請求項XXに記載の化合物の全てについて、当該効果を示すかは不明である」等の指摘の場合、化合物αに補正すれば、高確率で拒絶理由を回避することができる)。

【図3】

0624-1_Fig3_SupportRequirement

5.【重要】サポート要件違反に対する具体的なロジックの構築方法

 さて、上記ではサポート要件違反に対処する方法(パターン)を示しました。これらサポート要件の指摘が妥当で無い場合、及び指摘が妥当である場合のいずれにおいても、最終的には、「サポート要件を充足している」とするロジックを、補正前又は補正後の請求項に基づいて主張する必要があります。

 ここでは、このロジックの構築方法について説明します。

(1)メカニズムの記載に着目する

 上記しましたが、サポート要件の本質は、特許請求の範囲に記載の発明の「全て」が発明の効果を奏する(示す)ことが、発明の詳細な説明から理解できることでした。

 これをもっと具体的に説明すると、下位概念と上位概念に共通するメカニズム(構造、組成、及び化合物等)が作用して発明の効果を示すことが、発明の詳細な説明に開示又は示唆されている、ということになります。

 このメカニズム等の開示又は示唆が発明の詳細な説明にあれば、サポート要件の根拠となり、これを充足する旨の主張(ロジックを組むこと)が可能となります。

(2)メカニズムの例示

 例えば、上記で下位概念としての「マグロの照り焼き」と、上位概念としての「魚の照り焼き」について説明しましたが、これら「マグロ」と「魚」に共通する成分のドコサヘキサエン酸(DHA)が発明の効果である「頭の回転が早くなる」ことに寄与する、と発明の詳細な説明に開示されていれば、「マグロの照り焼き」は、発明の一実施形態にすぎず、「魚の照り焼き」にまで、一般化・拡張できるから、サポート要件を充足する、と主張することができるのです。

※なお、「魚」の全てにDHAが含有されているとは限らない場合には、「魚」を、「青魚」や「マグロ、サバ、ブリ、及びサンマからなる郡から選択される少なくとも一種」などの中位概念に補正することも検討できます(もちろん、補正の根拠は明細書等に開示されていなければならないことに注意して下さい(

『補正』ってなに?特許出願書類の一部修正及び削除等のやり方を教えます」を参照してみて下さい))。

(3)メカニズムの開示が見当たらない場合の対処法

 発明の詳細な説明に、メカニズムの開示が見当たらない場合には、他の対応を検討します。

 1つ目は、メカニズムが開示されている構成を追記して限定(補正)する対応が挙げられます。

 例えば、請求項が「A、B、及びCを含む組成物」と記載され、これらのA~Cがどのようにして発明の効果を奏するかのメカニズムの記載が無くとも、発明の詳細な説明には「特に、Dが~のように作用して発明の効果が向上する」などの記載が存在する場合があり、この「D」を請求項に追記する補正が考えられます。

(4)メカニズムの開示が全く見当たらない場合の対処法

 メカニズムの開示が全く見当たらない場合には、残念ながら、実施形態又は実施例に開示されている具体的な例(下位概念)に限定する補正をせねばならない可能性が高いです。

 今回はここまでです。

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